世界最大のバレエ・コンクール、ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)が現在開催されており、4月20日にファイナルが行われます。
日本からのファイナリストは以下の通りです。(日本以外の出場国で出場している、日本人の出場者もいると思います)
YAGPニューヨーク・ファイナル決選出場者:
◎ジュニア部門男性: 151 林 能矢 172 山本あらた 174 鈴木蒼士 177 末次正樹
◎ジュニア部門女性: 022 小田那奈 048 中島 耀 077 澤野 葵
◎シニア部門女性・男性: 214 立花乃音 363 松浦祐磨 366 森脇宗行
さて、このYAGPでは、毎年恒例のガラ公演があります。このコンクールで入賞してプロとして活躍しているダンサーと、今年の入賞者を中心とする華やかなガラです。例年はファイナルの翌日に開催されますが、今年はファイナルの一日前、4月19日に開催となります。
https://davidhkochtheater.com/tickets/reserve.aspx?performanceNumber=5747
Isabella Boylston* American Ballet Theatre
Daniil Simkin American Ballet Theatre
Olga Smirnova Bolshoi Theatre
Jacopo Tissi Bolshoi Theatre
Alexandra Mukhamedov* (New York Professional Debut) Dutch National Ballet
Constantine Allen* (New York Professional Debut) Les Grands Ballet Canadiens de Montreal
Kim Kimin* Mariinsky Ballet
Daniel Ulbricht New York City Ballet
Liubov Kazantseva Principal Guest Artist
Evelina Godunova (New York Debut) Staatsballett Berlin
Lex Ishimoto* Winner, So You Think You Can Dance, Season 14
Denys Drozdyuk World Ballroom Champion
*印は、YAGP出場経験者
ところが、このうち、ボリショイ・バレエのオルガ・スミルノワと、ジャコポ・ティッシの米国ビザが下りず、急きょキャンセルとなってしまいました。
Acclaimed Russian ballet dancers denied entry into US
https://pagesix.com/2018/04/18/acclaimed-russian-ballerinas-denied-entry-into-us/
4月10日に、この二人の米国での労働ビザが却下されたと入国管理局のサイトに掲載されています。
この措置は非常に不可解なものです。却下理由として、今回のビザは団体としての申請だったとのことですが、ボリショイからはこの二人だけが、団員というよりは個人の資格で入国してガラで踊る予定でした。オルガ・スミルノワは過去にこのガラ公演にも出演していますし、ボリショイ・バレエの米国ツアーにも参加しています。一方、ジャコポ・ティッシはロシア国民ではなく、イタリア人です。
おそらくは、米国とロシアとの外交関係が緊張していることが理由なのではないかと思われていますが、オルガ・スミルノワはボリショイ・バレエを代表するスター・バレリーナであり、なぜ今回入国できないのかは、まったく意味が分かりません。このガラ公演での目玉となる出演者の一人でした。
なお、同じロシアのカンパニーであるマリインスキー・バレエのキミン・キムもこのガラに出演しますが、無事入国し、イザベラ・ボイルストンのInstagramで「ドン・キホーテ」のリハーサルを行っている映像に映っています。(キミン・キムは5月28日、6月1日にABTの「ラ・バヤデール」公演にゲスト出演する予定)
国際情勢がこのような芸術に影響を及ぼすのは、嫌なことですよね。特にトランプの米国入国関係の政策はまったく馬鹿げているものだと感じられます。
追記:日本語での記事(AFP)も配信されています。
ボリショイのプリマ、米がビザ発給拒否 外交官追放が影響か
http://www.afpbb.com/articles/-/3171830
【4月20日 AFP】ロシアのボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)のプリマバレリーナ、オリガ・スミルノワ(Olga Smirnova)さんが、米国のビザ(査証)発給を拒否されたことが分かった。ロシア通信各社が19日、報じた。米ロ間では外交官追放の応酬により大使館の職員数が減っており、劇場側は「実務上の問題」によりビザ発給が間に合わなかった可能性があると説明している。
スミルノワさんは23日、ニューヨークのリンカーン・センター(Lincoln Center)で公演する予定だったが、国営ロシア通信(RIA)によると、同じくボリショイ劇場のダンサーであるジャコポ・ティッシ(Jacopo Tissi)さんとともに米入国管理当局から就労ビザの発給を拒否された。
ロシアと欧米諸国の間では、英国でのロシア人元スパイ毒殺未遂事件を受けて英国がロシア外交官を追放したことを皮切りに、外交官の追放合戦が勃発。在ロシア米大使館では職員が大幅に削減された。ローレンス・トビー(Laurence Tobey)駐ロシア米領事は19日、ロシア紙ネザビシマヤ・ガゼータ(Nezavisimaya Gazeta)に対し、職員の不足により、ロシア人のスポーツ選手やパイロットへの臨時ビザ発給を保証できなくなったと述べた。
これに対しロシア外務省は声明で、領事の発言に「困惑している」と述べ、ロシアに圧力をかけるための「追加手段」としてビザ問題を「意図的にでっちあげた」と米国を非難した。(c)AFP