ボリショイ・バレエ「ヌレエフ」は12月9日に初演予定

ボリショイ・バレエ「ヌレエフ」は12月9日、10日に初演予定されることが発表されました。

http://www.bolshoi.ru/about/press/articles/none/Nureyev-premiere-9-December/

今年7月12日に初演が予定されていながら、直前に上演がキャンセルになった、ボリショイ・バレエの新作「ヌレエフ」。ルドルフ・ヌレエフの人生についての作品です。

2016年のカンヌ国際映画祭のコンペティションに作品(M)uchenikを出品しフランソワ・シャレ賞を受賞した著名映画監督であり、またボリショイやマリンスキーだけでなく、ベルリン・コーミッシュ・オーパやシュツットガルト・オペラなどでも演出を行うオペラの演出家としても良く知られているキリル・セレブレンニコフ、元ボリショイのプリンシパルで現在はサンフランシスコ・バレエの常任振付家であるユーリー・ポソホフ、そして音楽はイリヤ・デムツキーに委嘱。2015年に初演され好評だった「現代の英雄」をクリエイトしたトリオを招き、鳴り物入りで製作された作品でした。

https://jp.rbth.com/arts/2017/07/12/801482

メディンスキー文化相の個人的な命令で公演が延期になったとする消息筋の情報、「文化省は、非伝統的な性的価値観のプロパガンダのように見える公演に不満を表明していた」という話が伝わってきていました。

ウリン総支配人は今月8日、ヌレエフの最終リハーサルを見学。劇場はその後、予定されていた4公演を何の説明もなしに「ドン・キホーテ「に変更しました。そしてウリン総支配人は記者会見で、公演がまだ準備できていないため、来年まで延期されたと説明していました。

しかしながら、多くの出演ダンサーたちが、Instagramなどのソーシャルメディアで、作品はきちんと完成されたものであったと証言しています。

コメルサント紙によれば、ボリショイ劇場は公演の背景幕用に、リチャード・アヴェドン撮影のヌレエフのヌード写真を使う権利を取得しており、実際ソーシャルメディアに投稿されたゲネプロの映像などではヌレエフの写真が背景幕に大きく使われているのを観ることができます。「異性の格好をする人達」が登場して踊るシーンや、合唱団員全員が女装することなども予定されていました。同性愛に対して厳しいロシアでは、受け入れられるのが難しい作品とは思われていました。

ボリショイ・バレエのコール・ド・バレエの団員、ヴェラ・ボリセンコヴァのInstagramより、ゲネプロの映像

公演中止を知って意気消沈するウラディスラフ・ラントラートフのInstagram

リハーサル映像の一部
http://tv.mk.ru/video/2017/07/09/premeru-spektaklya-nuriev-v-bolshom-otmenili-fragment-repeticii.html

キャンセルについてのニュース番組(ロシア語)リハーサル映像あり
https://youtu.be/Ew-cXDg1-mE

さらに8月22日には、キリル・セレブレンニコフが逮捕されてしまいます。 連邦捜査委員会は22日、2011年から14年にかけ、芸術事業に割り当てられた国の予算から少なくとも6800万ルーブル(約1億3000万円)をだまし取ったとして監督を訴追しました。これは、自由な芸術活動に対するプーチン政権の締め付けとの見方も出ています。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017082400223&g=int

彼の逮捕に対しては、ケイト・ブランシェット、イアン・マッケラン、そして演出家のサイモン・マクバーニーらが、彼に対する訴追をやめるように求める請願を出しています。
https://www.theguardian.com/world/2017/aug/29/leading-arts-figures-urge-russia-to-drop-flimsy-charges-against-director

そういった中、ボリショイ劇場は、9月22日に「ヌレエフ」の初演日を今年12月9日、10日とすると発表しました。
https://www.theguardian.com/world/2017/sep/22/nureyev-ballet-to-open-in-moscow-despite-directors-house-arrest
http://tass.com/society/967021

9月にボリショイ劇場のウリン総裁は、捜査委員会に、セレブンニコフとのミーティングの許可を求めると語っていました。この作品が上演できるか否かは、セレブンニコフの決断によるものとなるだろう、拘束されているためリハーサルに参加できないため、彼抜きで上演するか、もしくは彼の釈放を待つか。結局、セレブンニコフは彼抜きでの上演を認め、初演までに釈放されない場合には振付家のユーリ・ポソホフに一任するとしました。少なくとも10月19日までは拘束されているとのことであり、劇場を訪れることは現在は許可されていません。必要である場合には、ポソホフは演出についての確認を行うために、セレブンニコフとの面会を求めることはできるようです。

上演中止ではなく延期、とされたものの、この作品がお蔵入りする可能性も高いと言われていましたが、まずは上演できることになったようで良かったです。果たして、当初の作品そのままで上演できるのか、それとも変更が加えられているのか、12月9日の初演が注目されます。



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