マチルダ・クシェシンスカヤの伝記映画「マチルダ」をめぐる騒動

帝政ロシア、ロマノフ王朝の最後の皇帝であるニコライ2世の愛人としても知られた、マリインスキー劇場のプリマ・バレリーナ・アッソールタ、マチルダ・クシェシンスカヤ。彼女の生涯を描いた映画作品が完成し、10月にロシアで封切られる予定ですが、数々のスキャンダルに見舞われています。

http://www.imdb.com/title/tt4419196/

そもそもこの企画は、スヴェトラーナ・ルンキナの夫君であるウラディスラフ・モスカレフ氏が共同プロデューサーだったのですが、同じくプロデューサーであるウラジミール・ヴィノクールと金銭問題のトラブルが起き、結果的に脅迫されたルンキナの一家がロシアを出てカナダに移住するという事態に発展したという曰く付きのものでした。ヴィノクール(娘はボリショイ・バレエのソリスト、アナスタシア・ヴィノクール)は、この映画のプロデューサーとしての名前は残っています。

さてこの作品は、制作途中から「クリミアの美人すぎる検事」として日本でも有名になり、現在は国会議員となったナタリア・ポクロンスカヤ氏が、映画の内容に疑義を呈し、検察庁に調査を要求するという問題が発生していました。この作品はニコライ2世を中傷するものだと彼女は主張しているとのことです。当初リリースされた予告編の映像に、濃厚なラブシーンがあったことも問題視されました。

この辺のいきさつについてはこちらの記事で。
ロシア皇帝とバレリーナのロマンスを描いた映画「マティルダ」をめぐるスキャンダル
https://jp.sputniknews.com/opinion/201708184000547/

さて、この問題とは別に、「マチルダ」に対する様々なトラブルが発生しています。
Rage at tsar film suspected in Russia car blaze
http://www.bbc.com/news/world-europe-41225387

8月31日に、この映画の監督であるアレクセイ・ウチーチェリのスタジオが、火炎瓶で襲撃されました。さらに9月11日には、アレクセイ・ウチーチェリの弁護士の事務所の前で、2台の車が炎上しました。現場には"Burn for Matilda".と書かれた紙が置いてあったそうです。同じ日のモスクワの映画館で予定されていた試写会は、保安上の問題でキャンセルされました。

予告編

ニコライ2世の役を演じる俳優が、ドイツ人俳優のラース・アイディンガーであり、そして(映画完成まで伏せられていた)マチルダ役はポーランド人女優のミハリナ・オリシャンスカヤであるということに対しても、反感を持った人が多かったようです。(クシェシンスカヤ自身は、ポーランド系だった)特にロシア正教会の熱心な信者の中には、ニコライ2世を神格化している人もナタリア・ポクロンスカヤを含め、多くいるとのことです。

マチルダ・クシェシンスカヤがマリインスキー劇場のプリマバレリーナだったことから、映画の世界初公開は10月7日にこの劇場で行なわれます。バレエとオペラが中心のマリインスキーで、映画の初演が行なわれるのは劇場の歴史上初めてだそうです。音楽プロデューサーをマリインスキー劇場のワレリー・ゲルギエフ芸術監督自らが務めるなど、スタッフも豪華。17トンもの布を使った華麗な衣装も見ものだそうです。撮影はマリインスキー劇場の他、エカテリーナ宮殿、ユスポフ宮殿でも行われました。出演者の中には、ミハイロフスキー・バレエのファーストソリスト、アナスタシア・ロマンチェコワの名前もあります。

ロシアにおける一般公開は10月26日から。ドイツ、オーストリア、スイス、米国でも公開が予定されていますが、日本における上映予定は未定だそうです。



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