勅使川原三郎「月に吠える」

フランスの芸術文化勲章オフィシエを受章した勅使川原三郎「月に吠える」、3日目に行って来ました。

勅使川原さん、毎回なぜこんなアイディアが思いつくのかと驚かされるのが楽しみだが、今回も裏切られなかった。萩原朔太郎の詩に現れた様々な、不気味なのに美しいモチーフがダンサーたちによって体現され、勅使川原さんが病んだ心を持つ朔太郎その人なのか。

鮮やかな色彩の衣装、シンプルながら効果的な装置。奥行きのある東京芸術劇場の舞台機構を生かし、定評あるドラマティックな空間演出、舞台照明も鮮烈。光のチューブがうねうねと曲げられていて、強烈な印象を残す。

「月に吠える」の一節「天上縊死」を思わせる吊り下げられて横移動するダンサーたち。3人が虫けらのように横たわって地を這っているオープニングでの姿、そんな一瞬一瞬すべて、どこを切り取っても美しい。3人のダンサーの絡み合うカオス的な踊りも、言葉を失うほどの造形美。

勅使川原さん独特のボキャブラリーを見事に咀嚼しかつ個性もあるゲストダンサー、マリア・キアラ・メツァトリとパスカル・マーティと姿も美しい二人、作品そのものを動かし進ませる力のある鰐川枝里さん、気高く孤独な月を思わせる圧倒的な佐東さん、「青白いふしあはせの犬」を思わせる勅使川原さんの踊りも切れ味鋭い中でもしなやかで力みがなく、ダークな世界観の中でもふと心を癒す力がある。

朔太郎自身が「詩は文字では書ききれない」と言っていたが、ダンスも具体的な物語を描いていなくとも、今の時代においても新しく、人の心を捉えて離さない「月に吠える」の歪んでいて醜悪ながらもとてつもなく美しい世界を体ていた。4日間の公演期間の間にも確実に作品は進化しているんだろう、この先の進化も見届けたいと感じた。


©︎Akihito Abe


©︎Akihito Abe


©︎Akihito Abe


©︎Akihito Abe


©︎Akihito Abe


©︎Akihito Abe

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「月に吠える」

振付・照明・衣装・選曲・出演:勅使川原三郎

出演:佐東利穂子 鰐川枝里 マリア・キアラ・メツァトリ 
   パスカル・マーティ(イエテボリ・オペラ・ダンス・カンパニー)

【公演日時】2017年
8月27日(日)16:00

【劇場】
東京芸術劇場 プレイハウス

料金 *全席指定席
当日券は15時00分から劇場入口で販売
当日券はS席5,500円、A席3,500円のみ

http://www.st-karas.com/camp2017/



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