海外で活躍する日本人バレエダンサーを迎えての「バレエ・アステラス2017」が22日(土)に開催されます。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/performance/28_010272.html
7月19日に特別に、ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミーの校長ニコライ・ツィスカリーゼ氏によるクラスレッスンの見学会が開催されました。
http://www.nntt.jac.go.jp/ballet/training/news/detail/27_010818.html
バレエ・アステラスでは、日本における《セゾン・リュス(ロシアの季節)》の一環として、ワガノワ・アカデミーの生徒たちによる「人形の精」(ツィスカリーゼ改訂振付)が上演されるためです。
こちらの見学会を観てきました。ワガノワ・アカデミーからは、女子生徒6人、男子生徒2人が参加。この他、新国立劇場バレエ研修所の研修生のみなさん、そしてバレエ・アステラスの出演者の一部(影山茉以さん、ダヴィッド・チェンツェミエック、菅野茉里奈さん、リシャト・ユルバリゾフ、高野陽年さん、ルーゼンバーグ・サンタナほか)も参加していました。
ツィスカリーゼの指導は、とても基本を大切にするもの。バーレッスンでは特にポール・ド・ブラを丁寧に指導していました。前へのカンブレの時には腕が先とか、肩甲骨を意識すること、アン・バーやアン・ナヴァンの時の腕の位置、アン・オーの時にはつむじの上に腕を配置することなど。生徒の身体をきちんと修正したりするので、わかりやすくてとても参考になります。
センターレッスンでは、自身でお手本も見せてくれました。体型はふくよかになったものの、さすがにポジションは美しいです。グランジュッテの時の腕と脚の出し方などを細かく指導していました。
ワガノワの生徒たちは、女子は薄茶色のシックなレオタードとスカートを着用。さすがにみんな美しいですが、特に「人形の精」で主役を踊るマリア・ホーレワは体型、技術とも抜きんでています。男子2人もとても優秀でつま先がとても美しい。でも新国立劇場バレエ研修所の生徒さんたちも、プロポーションは美しい。また、さすがにバレエ・アステラスの出演者たちは、プロであるので見せ方はやはり上手いです。
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クラスレッスン終了後、ニコライ・ツィスカリーゼへの質疑応答がありました。
ボリショイ・バレエで長年プリンシパルとして活躍してきたツィスカリーゼが、別のメソッドを採用するワガノワ・アカデミーの校長となり、戸惑いはなかったのかという質問に対して。
「ボリショイ・バレエを退団してからすぐにワガノワの校長になったのではなく、2年間、バレエ教師を育てる学校で教育を受けました。その前にも、4年間、教師になるための教育を受けています。また、2年間、労働法の勉強をして学位をとりました。バレエの専門知識だけではなく、マネジメント、経営、指導のための教育を受けてきたのです。
ダンサーを続けていくことには限りがあります。理想とする踊りができなくなってきて、次のステップに行くべきかと考え、教育を現役のうちからやってきました。それまでも、現役を続けるのは21年間と周囲にも話してきて、実際に21年で辞めたわけです。ダンサーを辞めるのはつらかったです。ボリショイ入団11年目から、少しずつ教える仕事を続けていて、自分が教えた生徒が今はボリショイのスターダンサーになっています。(デニス・ロヂキンなど)
ボリショイとワガノワのスタイルの違いについてですが、最初にジョージア(グルジア)のトリビシでバレエ教育を受けてから、ボリショイに移りました。トリビシの教師たちはワガノワメソッドの教育を受けており、モスクワ派ではなかったのです。
ボリショイ時代でもマリインスキー・バレエのゲストプリンシパルを務めました。そして2006年には、ニコライ・ツィスカリーゼの夕べをマリインスキー劇場で行いました。他の劇場で活躍したダンサーを称える夕べは、マリインスキー劇場300年の歴史の中でもなかったことです。
ボリショイ劇場とマリインスキー劇場は、舞台のサイズはちょっと違っていて、慣れるのには時間がかかります。ボリショイ劇場は、この劇場(オペラパレス)より少し大きくて間口が広くて高さがあります。「眠れる森の美女」のマズルカで、主役たちが登場し王子とオーロラが中央にいる時のステップと動きは、ボリショイ劇場とマリインスキー劇場では大きな違いがあります。マリインスキーは舞台が狭いですが、ボリショイでは目いっぱい踊ります。(と動きを実演する)スタイルと動きの違いがここにあります。
ガリーナ・ウラノワは36歳でマリインスキーからボリショイに移籍し、同じレパートリーを両劇場で踊っています。彼女についての本でも書かれていることですが、移籍する時にボリショイ・バレエはレパートリーやメイクまでも見直して変えました。
ボリショイは劇場が大きいので客の表情が見えませんが、マリインスキー劇場は小さいのでお客さんの顔が見えます。ディアギレフがあくびをしたのも舞台から見えたそうです。バレエは総合芸術なので劇場によって見え方が違うため、空間の中で自分をどう見せていくかの違いがあります」
ミハイロフスキー・バレエで「ラ・フィユ・マル・ガルデ」を踊るのを観た方から、日本でまた踊ってくれる可能性はあるのかという質問に対して。
「かつてダンサーだったことを思い出すために舞台を踏むことがあります。今は、逆に舞台に立つのが楽しみになってきました。『ラ・フィユ・マル・ガルデ』を日本で踊ってほしいという要望があり、呼んでくれるところがあれば踊りたいと思います」
ツィスカリーゼの受け答えにはとても知性とユーモアが感じられました。彼がワガノワ・アカデミーの校長に就任する時には賛否両論がありましたが、アカデミーの教師となるために計画的にしっかりと勉強をしてきて周到に準備をしてきたのがわかりました。優秀な生徒も輩出されてきており、今のところはうまくいっているように見受けられます。
「私にとって日本はとくに大切」
https://jp.rbth.com/arts/2017/07/21/807752
ワガノワ記念ロシア・バレエ・アカデミーの校長ツィスカリーゼによるクラスレッスン公開(クラスレッスンの模様の写真あり)
http://ebravo.jp/archives/35887
ワガノワ・アカデミーのマスタークラスが7月~8月に開催されます。
http://www.arstokyo.co.jp/general/archive/2017/workshop/
2018年にワガノワ・アカデミーは「くるみ割り人形」「人形の精/パキータ」の来日公演を行います。
http://www.arstokyo.co.jp/organizer/archive/2018/nutcracker.html
http://www.arstokyo.co.jp/organizer/archive/2018/the_fairy_doll-paquit.html
クレムリンでのワガノワ・アカデミーの公演についてのルポルタージュ映像
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