◆◆レビュー評◆◆文・守山実花  新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』

   ~充実のキャストたちに彩られた舞台~

  ウエイン・イーグリング版はシンメトリー構図を重視し、古典様式を尊重しつつ、雄弁なマイムや、新たに振り付けた目覚めのパ・ド・ドゥに代表される物語性を加えたもの。ソリストから群舞まで男性ダンサーへの目配りが効いているのも特徴だ。主役ペアは4キャスト、うち池田理沙子(7日)、木村優里、井澤駿(12日)が役デビューとなった。4キャスト分の公演を観たが、ここでは二人ともに初役だった12日の公演をとりあげよう。

 木村のオーロラは、出だしこそ固さが見られ、16歳というオーロラの年齢を意識し過ぎているように感じられたものの、第2幕以降はつぼみがゆっくりと開き、薫りはじめるように、力みも抜け、踊りが大きく、伸びやかになっていった。6日に踊ったリラの精でもひと際光っていたが、ほっそりとした長い四肢が描き出す流麗なラインの美しさは得難い。
 井澤は登場から堂々とした風情で踊っていないときの立ち居振る舞いも含めて、自然体でありながら、常に王子に求められる品格を備えている。デジレはすべてを備えた完全な王子として描かれ人間的な感情の揺れ幅の少ないのだが、井澤のデジレは、未知のものに向かっていく若い情熱に溢れて魅力的だった。パートナーへの接し方なども含め、着実な成長を感じた。

 カラボスは米沢唯。プロローグに登場し去っていく間に、奥底から湧き上がってくる怒りや憎しみが、蜘蛛の糸となって宮廷全体を覆いつくした。本島美和の王妃との演技の応酬は実に見応えあり。母性豊かな王妃も出色。5~7日に踊ったカラボスでは、孤独の哀しみまでも感じさせ、圧倒的な」存在感を示した。細田千晶のリラの精は、強さよりも包み込むような優しさが際立ち、米沢のカラボスと好対照をなした。
 渡邊、中家を筆頭に、様々な役どころに配された男性ソリストたちが全日しっかりと舞台を支えたことにも触れておきたい。

<2017年5月6日、7日、12日、13日 新国立劇場オペラパレス / 文・守山実花>

 

木村優里、井澤駿 撮影:鹿摩隆司

小野絢子、福岡雄大 撮影:鹿摩隆司

 

 



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