ボルドー・オペラ劇場バレエ、シャルル・ジュドが芸術監督を退任

1977年にパリ・オペラ座のエトワールに任命され、引退後1996年以来ボルドー・オペラ劇場バレエの芸術監督を務めているシャルル・ジュド。ヌレエフ時代の人気エトワールでした。

そして現在63歳のシャルル・ジュドが、20年間務めた芸術監督の座を追われることになりました。今シーズン末で、退任することが発表されました。

http://www.leparisien.fr/bordeaux-33000/accord-a-l-amiable-entre-l-opera-de-bordeaux-et-son-directeur-de-danse-suspendu-23-03-2017-6791178.php

ボルドー・オペラ劇場バレエは昨年末にトラブルに巻き込まれていました。現在、フランスのほとんどのバレエ団は、コンテンポラリー作品が中心となっており、古典を上演しているのは、パリ・オペラ座バレエとボルドー・オペラ劇場バレエくらいでした。(そのパリ・オペラ座も、作品数で言えば現代作品の方がずっと多くなっています) ボルドー市はバレエ団の予算を削減し、39人在籍しているダンサーを13人削減するように伝えたのです。26人という人員では、古典全幕作品を上演することは不可能となります。

バレエ団のダンサーたち (エトワールは3名、うち2名は元ミハイロフスキーバレエのオクサーナ・クチュルクとロマン・ミハリョフ)
http://www.opera-bordeaux.com/charles-jude-ballet

ボルドーオペラ劇場バレエは、フランスで2番目に古いという伝統のあるバレエ団で、「国立」という称号がついている2つのカンパニーの一つでもあります。ヌレエフ振付作品など古典全幕の他、リファールなどフランスバレエの伝統を組む作品、そしてもちろん現代作品も上演しています。

12月31日には、バレエ団のダンサーたちはストを計画しましたが、結局ストは決行されませんでした。しかしカーテンコールで、ダンサーたちは、失われると想定される人数分を減らして登場して、人員削減がどれほどの影響を与えるのかアピールしました。

https://www.francemusique.fr/actualite-musicale/des-danseurs-de-l-opera-de-bordeaux-vont-saisir-la-justice-administrative-32295

また、オンラインでの署名も募集されました。(日本語での説明もあり)8000人ほどの署名が集まっています。
https://www.change.org/p/direction-de-l-op%C3%A9ra-national-de-bordeaux-soutien-au-ballet-classique-%C3%A0-bordeaux-support-the-classical-ballet-in-bordeaux

このキャンペーンに関連して、フランスでの古典バレエの重要性を訴える動画。(英語字幕付き)

ボルドー市は、市街地が初めて世界遺産に指定された歴史的な都市で、オペラ劇場も大変美しい建築物です。また、2017年度のロンリー・プラネットで、世界で最も魅力的な都市として選ばれました。

今年の2月6日には、2年契約での更新が予定されているダンサー7人の契約が1年契約となっていることも明らかになりました。もう一つの問題は、2017年に「国立オペラ劇場」の名称を使えるかどうかを文化省と交渉することになっているのですが、これが果たしてこの人数が減らされた状態で使用できるかどうかが不透明となっていました。

そしてシャルル・ジュドは2月10日に劇場側に非協力的であるということで停職処分が下され、現在に至っていました。

先週の木曜日、ボルドー・オペラの芸術監督である指揮者マルク・ミンコフスキーとシャルル・ジュドは、ボルドー・オペラ劇場バレエでは新しい振付プロジェクトを進めるために、新たな人を招聘する、という共同声明を発表しました。「国立オペラ劇場」の名称を今後5年間にわたって引き続き使えるかどうかは、文化省と2017年に交渉するとのことです。そして最後に、「ボルドー・オペラ劇場バレエの芸術監督として活動したのち、ジュドは2016-2017シーズンの終わりに、引退することに合意しました」、と結んでいます。

ボルドー・オペラ劇場のプレスリリース(フランス語)
http://www.opera-bordeaux.com/presse-2774

なお、ボルドー・オペラ劇場では、7月にジュド振付「ロミオとジュリエット」が上演されます。このリリースでは、ジュドの功績をたたえるセレモニーが行われる予定であると記しています。


なお、やはりパリ・オペラ座エトワールのニコラ・ル=リッシュの新作「Sur la grève 」が、3月30日にボルドー・オペラ劇場バレエで初演を迎えます。ダンソマニにル=リッシュのインタビューが載っています。この作品は、ジュドの依頼により振付けられたものです。一部では、ジュドの後任の有力候補にル=リッシュの名前が挙がっている噂がありますが、まだ声などはかかっていないとル=リッシュは語っていますが、この仕事には興味はあるとも。

フランスにおいては、政治家から見ると古典バレエは古臭いものであるという固定概念があるようです。その一方で、コンテンポラリーダンスを支援することは、若くて活気のある芸術に理解のあるイメージを政治家に与えるということで、より好まれているとのことです。古典作品を上演することにこだわったジュドの命運は、ここで尽きてしまいました。

(といいつつ、オハッド・ナハリンの「マイナス16」など現代作品も上演されています)

古典軽視、コンテンポラリー重視の傾向は、ウラジーミル・マラーホフ、そしてナチョ・ドゥアトが退任し、サシャ・ヴァルツが芸術監督に就任することになったベルリンでもいえることです。(ベルリン国立バレエの件については、また別個に報告できればと思います)これは世界的な傾向であり、古典バレエ中心の日本というのは異例中の異例かもしれません。

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