3/18 ニーナ・アナニアシヴィリの軌跡~最後のクラシック・ガラ Aプロ

ニーナ・アナニアシヴィリの軌跡~最後のクラシック・ガラ Aプロ
東京文化会館 

http://www.tbs.co.jp/event/nina-ananiashvili/

ニーナ・アナニアシヴィリの最後のクラシック・ガラと銘打たれたこの公演、ニーナが観客に寄せる愛、12年間育てて来たジョージア国立バレエに寄せる愛、そして観客からニーナへの愛と、深い愛に包まれた温かい舞台だった。ガラ公演と言いつつ、Aプロについては幕を丸ごと見せてくれて、立派な舞台装置、コール・ド・バレエもついたパフォーマンスなので、全幕を観たような充実感があった。


第一部
『白鳥の湖』より 第2幕・4幕

 オデット     ニーナ・アナニアシヴィリ
 ジークフリード マルセロ・ゴメス(アメリカン・バレエ・シアター)
 ロットバルト   ダヴィッド・アナネリ

昨年夏のオールスター・ガラではふっくらしていたニーナだったが、今回の公演のために体型も絞られており、オデットの衣装が良く似合う。甲の出た美しい足先、脚のラインの美しさ、そして彼女のトレードマークである、柔らかく波打つような腕使いは健在。コーダのアントルシャや連続パッセ、ピケターンも見事なもので技術的な衰えはほとんど感じられない。これで今月54歳になるとはとても思えない。わずかに、背中の柔軟性が少しだけ失われているくらいだ。何より、ニーナの白鳥は台詞が聞こえてくるくらい情感豊かで、ドラマティックで、オデットなのに温かみを感じさせてくれる。パートナーのマルセロ・ゴメスの優しく紳士的なサポートで二人の心が通じ合っているのが感じられるのも大きい。4幕も終幕まで上演してくれたので、「白鳥の湖」の全幕を観たような満足感があった。おなじみアレクセイ・バクランの指揮によるシアター・オーケストラ・トーキョーの演奏も、ドラマを盛り上げてくれた。

そしてジョージア国立バレエ(グルジア国立バレエ)のクオリティが向上したことに驚かされた。コール・ド・バレエのダンサーたちは、手脚が長くプロポーションが美しくて容姿端麗。揃っていない部分もあるものの、ロシアバレエの伝統をしっかりと引き継いでいて見ごたえがあった。4幕でオデットを守るべくフォーメーションを組んだ白鳥たちの姿はドラマティックで、しっかりと主役を引き立てていた。ロットバルトのダヴィッド・アナネリは跳躍がとても大きい。ニーナが踊らなくなっても、このバレエ団を今後も観られたらいいと感じた。


第二部
『セレナーデ』 
ジョージ・バランシン振付
舞台指導 バート・クック、マリア・カレガリ

エカテリーナ・スルマーワ、ヌツァ・チェクラシヴィリ、ニノ・サマダシヴィリ
ダヴィッド・アナネリ、フィリップ・フェードゥロフ

ニーナもゲストも出演しない、オール・ジョージア国立バレエによる『セレナーデ』。これがとてもクオリティの高い上演だった。この演目に出演しているダンサーたちは体型も非常に美しく、冒頭の6番ポジションで腕を上げたポーズが絵になる。特に女性の主役の3人のエレガンスには惹きつけられた。なんともいえない詩情、豊かな音楽性、そしてほのかに漂うドラマ。バランシンは、もちろんジョージアにルーツがあるわけで、そのバランシンの魂を連れて帰ったような心震える舞台となった。男性のアンサンブルの中に日本人男性もいたけれども、他のダンサーと引けを取らないプロポーションの持ち主だった。


第三部
『眠れる森の美女』3幕より 

 オーロラ姫  ニーナ・アナニアシヴィリ
 デジレ王子  アレクサンドル・ヴォルチコフ(ボリショイ・バレエ)
 リラの精    ニノ・サマダシヴィリ

 ダイヤモンドの精 ヌツァ・チェクラシヴィリ サファイアの精 ナタリア・リグヴァ―ワ
 金の精 タマア・バクタゼ  銀の精 ニア・ゲラゼ

 白い猫 ニア・グロルダーワ 長靴を履いた猫 ディエゴ・ブッティリオーネ
 フロリナ姫 マリアム・エロシュヴィリ  青い鳥 高野陽年
 シンデレラ エカテリーナ・スルマーワ フォーチュン王子 フランク・ファン・トンガレン

『眠れる森の美女』3幕は、豪華な舞台装置、そして日本人の子役も多数出演した華麗な舞台となった。ニーナは金髪の鬘をかぶってお姫様そのものの愛らしさ。温かい笑顔と気品ある動きはまぶしいオーラを放っていた。アレクサンドル・ヴォルチコフもサポートは完璧で、お似合いの美しいカップル。彼のヴァリエーションも、東京文化会館の舞台が狭く感じられるほどのダイナミックさだった。最後にニーナがサポートされながらパンシェをしてポーズをして顔を客席に向けたときの可愛らしさと言ったら、言葉にできないほどだった。特にリラの精や宝石の精のダンサーたちはとても美しくて技術もしっかりとしていた。また、青い鳥を踊った高野陽年さんは、長身でラインも美しく、浮かび上がるような高い跳躍やブリゼ・ボレの細かい足先などが見事でこの役はぴったりだった。

ニーナファンが大勢駆け付けたこの日の公演は、たくさんの公演が重なった日だったのに客の入りも良く、当然カーテンコールでは総立ちとなった。カーテンの前でも、ニーナはサポートされてのパンシェのポーズを披露。大きな愛と幸せに満たされた、とても素敵な公演だった。まだまだ古典を踊る技術も保っているニーナだけど、ここは引き際の美学を優先させたのだろう。クラシック・ガラ、グランドバレエを踊るのは最後とのことだけど、また彼女の明るく華やかな舞台を観続けたいと思う。まずはBプロが楽しみ。

ジョージア国立バレエ
指揮 アレクセイ・バクラン
管弦楽 シアター・オーケストラ・トーキョー

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