パリ・オペラ座バレエ2017来日記者会見レポート

パリ・オペラ座バレエ2017年日本公演が3月2日に開幕します。これに先立ち2月27日、パリ・オペラ座総裁のステファン・リスネル、各公演で主演するエトワールらが出席し、記者会見が行われました。

参加したのは、パリ・オペラ座総裁のステファン・リスネル、メートル・ド・バレエのクロチルド・ヴァイエ、エトワールのリュドミラ・パリエロ、マチアス・エイマン、レオノール・ボラック、アマンディーヌ・アルビッソン、そしてプルミエ・ダンス-ルのユーゴ・マルシャンです。

記者会見のレポートはかなり多くの媒体に出ているので、注目してみた点を中心にピックアップしました。

総裁ステファン・リスネルの挨拶から。
「佐々木忠次さんと初めて会ったのは、30年前のことです。スカラ座の総裁を務めていた時には、ダニエル・バレンボイム氏と共に佐々木さんに会いました。公演初日にあたっては、団員全員で佐々木さんに想いを馳せることになります。東京バレエ団との信頼関係も結ばれており、2012年にはオペラ座に招聘しました。ともに芸術的な歴史を歩んできました」

「ラ・シルフィード」を踊ることを中心に各ダンサーが意気込みを語りました。

「今回のパートナー、ユーゴ・マルシャンとは一緒に踊るのが初めてなので楽しみです。『ラ・シルフィード』は繊細なポワントワークが重要です。現実ではなくて妖精を演じているのであり、トウと床の接触に注目してほしいと思います」(アマンディーヌ・アルビッソン)

「アマンディーヌがパートナーなのは嬉しいです。ジェームズはロマンティックな役です。パリの外で主役級の役を踊るのは初めてなので重要な機会です。ジェームズという、妖精にも人間の娘にも恋している人物像も興味深いです。美しい物語バレエを観て心地よいひと時を過ごしてほしい」(ユーゴ・マルシャン)

「5年ぶりに日本に来ることができて嬉しいです。元エトワールの皆さんと役の準備ができるのもうれしいです。『ラ・シルフィード』は一つのスタイル、様式を示している作品です。いい意味でスタイルが突出しているように感じられます」(ジョシュア・オファルト)

「エトワールとして来日するのは初めてなので大切な機会です。クロチルド・ヴァイエやこの役を体現するギレーヌ・テスマーと準備し、さらにクロード・ヴュルピアンともリハーサルしました」(リュドミラ・パリエロ)


「同じ役を再び踊るときでも、常にリサーチの余地があります。新しいパートナーを得ることによって新しい役のように感じます。『ラ・シルフィード』は、ピュアなロマンティックバレエで、ニュアンス、感情のバレエで、表現するバレエです。プティ・バットゥリー、グランバットゥリーなどフランス的な技術が詰め込まれており、難しい技術に集中しがちで数学的に考えてしまいますが、すべては物語によって流れが誘導され、融合して特別な雰囲気が醸し出されます。テクニックは二義的なものなのです」(マチアス・エイマン)

「ラ・シルフィード」を指導するクロチルド・ヴァイエ

「日本に来るのは15回目になります。今回は3人のメートル・ド・バレエが来日して作品を用意しました。『ラ・シルフィード』はロマンティックバレエの最高峰で、統制のとれた技術を必要とします。復元を行ったラコットは生き生きとした厳しい目でリハーサルを行い、ミリ単位の正確さを求めていましたので、彼の作品そのままが再現されています」

新エトワールのレオノール・ボラック。今回は、彼女を含め非常にフレッシュなメンバーが揃いました。

「エトワールの第一歩を踏み出せてうれしいです。特に、昨年12月31日に任命された時のパートナーであるマチアス・エイマンと一緒に来日できて感動です。あまりエトワールとなったからと言って緊張しすぎることなく、今までのことを継続することを心がけています。また、『ダフニスとクロエ』ではジェルマン・ルーヴェ、そしてオーレリー・デュポンと仕事ができるのもうれしいです。『ラ・シルフィード』エフィ役は、物語を語ることができないといけない役です」

ステファン・リスネルは、ミルピエからデュポンへと芸術監督が交代しての変化や期待することについて語りました。

「ブリジット・ルフェーブルは20年以上芸術監督を務めてきました。オペラ座のようなカンパニーの芸術監督を指名するのは複雑な仕事です。350年以上の歴史があり、オペラ以上にバレエの歴史がありますし、ほとんどのダンサーはパリ・オペラ座学校の出身です。オペラ座の特有の歴史を維持していかなればなりません」
「今回の日本ツアーでは、パリ・オペラ座のツアーの特徴が現れています。『グラン・ガラ』では、バランシン、ロビンス、そして現代の振付家の上演があります。古典が現代バレエに栄養を与え、また現代バレエが古典に栄養を与えます。オペラ座は、すべてのバレエをレパートリーとすることができます。歴史を大切にしながら、現代性も大切にしていく、その両方が芸術監督には求められています」
「ミルピエは在任が1年半と短かったですが、自分自身の芸術に集中するために退任しました。芸術監督と振付家のダブルの職務は荷が重すぎたのです。アメリカのバレエの方向性とフランスのカルチャーが違っていたのも、短命に終わった要因です。なぜ、オーレリー・デュポンになったのかは自ずとここから答えを導き出すことができます。ルフェーブルの後で、外からの視線を当てることは重要なことだったと思います。ミルピエの一年半がなければ、彼女が就任することはなかったでしょうから」

また、ダンサーから見た、新芸術監督オーレリー・デュポンについてのコメントも聞くことができました・

「オーレリーはダンサーと向き合ってきました。彼女は自身の中で決断をしているし、ここでの場所を見つけることができました。この例外的なカンパニーで優れた選択を行っています。東京バレエ団で『ボレロ』を踊ったように、ダンスに対する情熱は今も持っています。次世代に自分の経験を継承し分け与えることをしています。彼女の選択には信頼を寄せていますし、好奇心にあふれる人で、それが今の職務に反映されています」(マチアス・エイマン)
「彼女のダンサーとしての時代を知っていますが、仕事熱心で要求が高く、私にとって良いお手本となっています。アーティスティックな選択も信頼できます。前に共に進んでいき、よりよい公演を届けようとする気概もあります」(リュドミラ・パリエロ)

「アドミニストレーションも、ダイナミックなことが行われており、いい雰囲気で物事が進められています」(クロチルド・ヴァイエ)
「総裁は、現実面の仕事もしていますが、2017-18のプログラムは、デュポンが選んだものです。ホフェッシュ・シェクター、ペレーズ、ティエレ、エックマンなどの現代の振付家を入れているところが彼女らしいところです。伝統への回帰だけでなく、意欲的なプログラムです。来年の定期会員の登録は、前シーズンより30%も増えました。また彼女はガラをオーガナイズする時にも、自分自身が動いてオーガナイズすることができる能力があります」(ステファン・リスネル)

オーレリー・デュポンの新しいシーズンはまだ始まって半年ですが、目下のところは好調で、ダンサーにも歓迎されているようです。チケットの売り上げが伸びているのも喜ばしい限りです。リスネルの言葉にあったように、ほとんど無名の若手振付家の作品を上演する思い切った方針も、デュポンの選択だからと、プラスの方向に動いているのが素晴らしいですね。ダンサーたちもぐっと若返り、会見はとても和やかなムードでした。

マチュー・ガニオ、エルヴェ・モローの降板でキャスト変更が起きてしまったのは残念ですが、キャスト変更があってもなお、非常にレベルの高い、世界トップクラスのダンサーを取り揃えているのがパリ・オペラ座です。本来来日する予定ではなかったユーゴ・マルシャンを観ることができるようになったのも、怪我の功名です。オペラ座のレパートリーの中でも歴史的にも大きな意味を持つ『ラ・シルフィード』から、来日公演はいよいよ始まります。楽しみですね。

パリ・オペラ座バレエ2017年日本公演
http://www.nbs.or.jp/stages/2016/parisopera/



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