英国ロイヤルオペラハウスシネマシーズン ロイヤル・バレエ「くるみ割り人形」

英国ロイヤルオペラハウスシネマシーズン、次の上演はロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」です。

http://tohotowa.co.jp/roh/movie/the_nutcracker.html

劇場公開は2月10日からですが(一部の劇場は2月18日から)試写を見せて頂きました。

【振付】ピーター・ライト/レフ・イワノフ
【音楽】ピョートル・チャイコフスキー
【指揮】ボリス・グルージン
【出演】フランチェスカ・ヘイワード (クララ)
ローレン・カスバートソン (金平糖の精)
ギャリー・エイヴィス (ドロッセルマイヤー)
フェデリコ・ボネッリ (王子)
アレクサンダー・キャンベル (ハンス・ペーター/くるみ割り人形)
レティシア・ストック (コロンビーヌ)
フェルナンド・モンターニョ (アルルカン)
マルセリーノ・サンベ (兵士)
マヤラ・マグリ (ヴィヴァンデール)
ニコル・エドモンズ (ねずみの王様)
クリスティナ・アレスティス、ヨハネス・ステパネク(スペイン)
イツィアール・メンディザバル、平野亮一、リース・クラーク、ニコル・エドモンズ (アラビアン・ダンサー)
アクリ瑠嘉、マルセリーノ・サンベ (中国)
トリスタン・ダイヤー、ポール・ケイ (ロシア)
ミーガン・グレース・ヒンキス、マヤラ・マグリ、エマ・マグワイア、レティシア・ストック (葦笛)
崔由姫 (ローズ・フェアリー)
マシュー・ボール、ジェームズ・ヘイ、トーマス・モック、ヴァレンティノ・ズケッティ (花のワルツのエスコート)
クレア・カルヴァート、ヘレン・クロフォード、小林ひかる、ベアトリス・スティクス=ブルネル (花のワルツリード)

キャスト表はこちらから
http://static.roh.org.uk/showings/the-nutcracker-live-2016/eng.pdf

ロイヤル・バレエの冬の定番、ピーター・ライト振付の「くるみ割り人形」。人気作につき今までも何回も映画館で上映されており、今回は前回の上映とほぼ同じ主演キャスト。ただし、今回は中国の踊りの振付が改訂された。今までの中国の踊りが政治的に正しくないと判断されたようで、三つ編み、白塗りなどの民族色を取り除いた、アクロバティックな振付となっていた。

ロイヤル・バレエの「くるみ割り人形」といえば、やはり主役はドロッセルマイヤー役のギャリー・エイヴィス。マントの翻し方もスタイリッシュで、これぞドロッセルマイヤーというスマートさと少しの妖しさ、色気が魅力的で作品を支配している。

前回フランチェスカ・ヘイワードをクララ役で観たときには、まだ新人に近い扱いだったけど、今やプリンシパル。可愛らしさはそのままに、プリンシパルらしい貫禄も備えて来た。そろそろクララ役も最後なのかもしれない。パートナーのアレクサンダー・キャンベルとは息も合っているけどキャンベルは脚が太く、小顔のフランチェスカと並ぶと顔の大きさも目立つ。技術はもちろん素晴らしいのだが。

ピーター・ライト版では、2幕の各国の踊りにもクララとくるみ割り人形が参加するのが楽しくていい。ロシアの大きな跳躍の踊りにはくるみ割り人形が一緒になって跳び、花のワルツの中でも踊る。全編出ずっぱりでとても体力の必要な役だけど、二人とも疲れを見せなかったのは流石だ。

新しい振付となった中国での、アクリ瑠嘉さんとマルセリーノ・サンベのゴムまりのようなふたりの踊りはとても楽しかった。体格的にもちょうど同じくらい。

マルセリーノ・サンベとレティシア・ストックがくるみ割り人形とクララ役、クレア・カルヴァートがローズ・フェアリーをリハーサルする映像

花のワルツを先導するローズ・フェアリー役には崔由姫さん。とても優雅で音楽性も豊かでおもわる頬が緩んでしまうような美しい踊り。別キャストでは金平糖の精も踊っている彼女、プリンシパルになってほしいダンサーだ。

そして金平糖のグラン・パ・ド・ドゥ。ローレン・カスバートソンの優雅で気品があふれる中にも、とても難しい振付をなんでもないようにスムーズにこなしているさまは素晴らしい。長身の彼女がきっちりとコントロールを行き届かせて、一つ一つのパをクリスタルのような輝きで決めていく様はまさに女王。コーダでの移動しながらのグランフェッテも、音にきっちり合っていて正確で見事だった。パートナーのフェデリコ・ボネッリは前半は少し不調そうだったけど、サポートは的確でコーダのマネージュはきれいだった。

くるみ割り人形に姿を変えられてしまったハンス・ピーターが元の姿に戻ってドロッセルマイヤーと再会し、その少し前に夢から覚めたはずのクララとすれ違うところは心が温かくなるようなホッとする余韻を残す。このプロダクションが長く愛されているのがよくわかる。カーテンコールには、90歳の誕生日を迎えたばかりのピーター・ライトも登場していた。

*****

映画館上映のお楽しみは幕間のインタビュー。司会のダーシー・バッセルがピーター・ライトにインタビューをしていた。ライトが振付を始めたきっかけは、ジョン・クランコに依頼されて「ジゼル」を振付けることになったことからだそう。「ジゼル」の物語は好きではないから、と断ろうとしたのにどうしても作ってほしいと言われて振付けたことで、振付という仕事が好きになったとのこと。「くるみ割り人形」を振付ける時に、一緒にリサーチをしたProfessor Roland John Wileyが見つけて来た雪の精のシーンの舞踊譜を基にしたのだけど、61人もコール・ド・バレエがいて、振付はすべてバランセだったそう!

また、今度映画館中継される「ウルフ・ワークス」に主演するアレッサンドラ・フェリも登場。彼女はこの「くるみ割り人形」公演を中継の時に観ていた模様。現代における物語バレエの最高峰と語っていた。「ウルフ・ワークス」のリハーサルや本番の映像も流れ、期待が高まった。

さらに、ダンサーのポワントシューズのためにバレエ団に寄付してね、という目的でポワント(トウシューズ)についての映像も流れた。崔由姫さんとクレア・カルバートとヤスミン・ナグディが登場してポワントを加工するところが出て来る。くるみ割り人形では40数足ポワントを使い、ロイヤルで年間2000足。ユフィさんは2ヶ月ですでに20足使ったそう。

毎回、劇場にいるような体験が映画館でできる「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン2016/17」楽しみです。特典映像や写真などが見られるデジタルプログラムは、FREENUTのコードを入れると無料で見ることができます。
http://www.roh.org.uk/publications/the-nutcracker-digital-programme

北海道 札幌シネマフロンティア 2017/2/18(土) ~2017/2/24(金)
宮城 MOVIX仙台 2017/2/18(土) ~2017/2/24(金)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
東京 TOHOシネマズ六本木ヒルズ 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
神戸 TOHOシネマズ西宮OS 2017/2/10(金) ~2017/2/16(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2017/2/11(土) ~2017/2/17(金)

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