ボリショイ・バレエ in シネマ Season2019-2020 アンコール上映中/ボリショイ・バレエ昇進・引退情報

『ボリショイ・バレエ in シネマ Season2019-2020』のアンコール上映が本日から始まっています。

https://www.bunkamura.co.jp/cinema/lineup/20_bolshoi.html

2020年10月9日(金)~29日(木)
【料金】全席指定 大人3,700円(税込)、学生2,500円(税込/要学生証ご提示)

◆上映スケジュール◆
ジゼル
10.9(金)18:45、10.13(火)18:45、10.18(日)18:00、10.24(土)18:00 
白鳥の湖
10.10(土)18:00、10.16(金)18:45、10.21(水)18:45、10.25(日)18:00 
ライモンダ
10.11(日)18:00、10.17(土)18:00、10.23(金)18:15、10.29(木)18:15 
くるみ割り人形
10.12(月)18:45、10.20(火)18:45、10.28(水)18:45 
ロミオとジュリエット
10.14(水)18:30、10.22(木)18:30、10.26(月)18:30 
海賊
10.15(木)18:00、10.19(月)18:00、10.27(火)18:00

<Bunkamuraル・シネマ編成担当者からのコラム>

◆新作「ジゼル」「白鳥の湖」「ライモンダ」

3作品全て鑑賞して、スミルノワという一人のダンサーが様々な役、無邪気な村娘、儚い白鳥の化身と冷酷な黒鳥、凛とした孤高の姫を踊る姿を見比べるという贅沢な楽しみ方が一番おすすめです。とはいえ、なかなか難しいと思いますので、各演目の見どころを以下にご紹介します。

いずれも必見の新作揃いですが、特に注目いただきたいのが、ラトマンスキーによる新演出版の「ジゼル」。今回、舞踊譜などの史料を掘り起こして作り上げられた新演出版は、現在上演されている振付とは異なる場面も多く、マイムが多用されていたりヴァリエーションの振付が異なるのも新鮮です。最大の特徴は、原典版を再現したというヒロインの恋敵であるバチルド姫が心優しい人物として描かれている点で、終盤に彼女が大きな役割を果たします。原典に忠実でありつつも、ラトマンスキーの独創性によるドラマティックな演出も随所に散りばめられ、中でもウィリたちが形づくる十字架のフォーメーションは斬新な美しさを発見できるはず。また、ベルタ(ジゼルの母)役で名花と謳われたリュドミラ・セメニャカが出演しているのもバレエファンには必見のポイントです。幕間にはラトマンスキーによる解説も入り、見応えたっぷり。

スミルノワ演じる「白鳥の湖」のオデット/オディールの素晴らしさはすでに来日公演などでも証明済みですが、スクリーンではその繊細な舞をよりじっくりご堪能いただけるでしょう。主役以外のダンサーも多くのソロを踊る「ライモンダ」では、実力派揃いのソリストによる高い技術と演技力が満喫できます。ボリショイ劇場の広さを十二分に生かした迫力の群舞や民族舞踊も圧巻で、バレエ団の層の厚さを感じることができます。

ボリショイ・バレエといえば男性ダンサーの魅力に触れないわけにはいきません。「ジゼル」のベリャコフは、美しい足のラインとロシアバレエの強靭な技術で、ラトマンスキーがこの版で加えた足先の難しいテクニックを軽々と魅せてくれます。ジゼルへの熱い思いがほとばしる演技やサポート技術も必見。一方、「ライモンダ」の婚約者ジャン・ド・ブリエンヌ役では白いマントを翻す騎士を美しく演じるベリャコフの異なる魅力が見られます。「白鳥」でジークフリート王子を踊るティッシは、ミラノ・スカラ座バレエから2017年にボリショイに移籍。長身で美脚、かつ美貌を兼ね備え、イタリア風の華やかさが魅力のダンサーで、まだ25歳という若さながら次々と主役を任されている大注目の新星です。ロットバルト役のゲラシチェンコは、ワガノワ・バレエ・アカデミー出身で、学生時代から注目された若きエリート。強いキャラクター性のある役を説得力もって演じる逸材です。

◆再上映作「くるみ割り人形」「ロミオとジュリエット」「海賊」

「くるみ割り人形」はボリショイきってのダンスール・ノーブルのチュージンの“正統派王子様”の魅力が真骨頂。「ロミオとジュリエット」はロミオを演じるラントラートフのロマンティックな美しさに魅了されることをお約束します。「海賊」は100人を超えるダンサーが出演する豪華版で、古き良き時代を再現した素晴らしい衣装や装置も見どころ。アリ役が登場しない演出である分、より重要な役となるツヴィルコ演じるコンラッドと、見事な回転を自在に操るクリサノワのスリリングな共演に、ボリショイらしいエネルギーを感じていただけることでしょう。

さて、ボリショイ・バレエは9月4日より新シーズンが始まり、パリ・オペラ座の元スジェ、シモン・ヴァラストロら4人の新進振付家によるプログラム"Four Characters in Search of A Plot". で開幕しました。まだヨーロッパからモスクワ行きの定期便が飛んでいないため、振付家をモスクワ入りさせるためにパリからチャーター機を飛ばしたそうです。

(ボリショイ開幕に向けてのリハーサルなどのドキュメンタリー)

そしてデニス・サヴィンがプリンシパルに、オルガ・マルチェンコワがリーディングソリストに、イゴール・ゲラシチェンコがファーストソリストに昇進しました。サヴィンは、「眠れる森の美女」のカラボス役、と異例の役での昇進です。

https://www.bolshoi.ru/en/persons/ballet/soloist/

デニス・サヴィンは、キャラクターダンサーで、今回のシネマの「ジゼル」でヒラリオン役を演じています。また「くるみ割り人形」ではドロッセルマイヤー、「海賊」ではビルバント役です。最近特に印象的だったのは「パリの炎」のジェローム役で、演技力が光っていました。キャラクターロール中心のダンサーがプリンシパルになることは、ボリショイでは異例のことです。

オルガ・マルチェンコワはとても大柄でゴージャスなダンサーで、2018-19シーズンに映画館上映された『ラ・バヤデール』でガムザッティ役を踊りました。昨年のロンドン公演では『白鳥の湖』のオデット/オディール役も踊っています。

イゴール・ゲラシチェンコは、2017年に入団というまだ若手のダンサー。ワガノワ・バレエ・アカデミーでニコライ・ツィスカリーゼの教え子でした。『白鳥の湖』の悪の天才(ロットバルト)、『ラ・バヤデール』のソロル、そして先日は『眠れる森の美女』で王子を踊っています。とても長身のダンサーです。今回のボリショイ・バレエ・イン・シネマの『白鳥の湖』でもロットバルト役で観ることができます。

一方で、22年間と長年ボリショイ・バレエで活躍し、日本でも牧阿佐美バレヱ団などにゲスト出演してきたルスラン・スグヴォルツォフは、プリンシパルの定年となり、10月からは登録ダンサーとなっています。昨年は『スパルタクス』のクラッスス役に入団22年目でデビューしてまだ踊ってくれると思っていたのですが。しかしボリショイの登録ダンサーでも、まだ主役級を踊っているダンサーは多いです。マリーヤ・アレクサンドロワ、ニーナ・カプツォーワ、アレクサンドル・ヴォルチコフなど。実際、スグヴォルツォフは10月17日には『ドン・キホーテ』のエスパーダ役にキャスティングされています。

また、ミハイロフスキー・バレエ、マリインスキー・バレエを経てボリショイ・バレエのリーディング・ソリストとして活躍し、世界バレエ・フェスティバルにも出演して日本でも人気があったアンドレイ・メルクリエフは、出身地であるロシア連邦のコミ共和国のコミ国立歌劇場バレエ団の芸術監督に就任しました。2016年にやはり登録ダンサーに移行していました。コミ国立歌劇場バレエ団の現在の芸術監督は、やはりボリショイ・バレエのプリンシパルだったマリーヤ・ルイシュキナですが、任期完了につき芸術監督が交代しました。

http://ourreg.ru/2020/10/01/glavnym-baletmejsterom-teatra-opery-i-baleta-komi-stanet-andrej-merkurev/

このように世代交代していくのは、寂しいところもありますが、期待の若手も次々と登場しており、目が離せないのがボリショイ・バレエです。次にプリンシパルに昇進するのは、今回のボリショイ・バレエ・イン・シネマの『白鳥の湖』で王子役を踊った、第二のロベルト・ボッレと目される容姿端麗のジャコポ・ティッシか、同じく今回のボリショイ・バレエ・イン・シネマの『ロミオとジュリエット』でマキューシオ、『海賊』でコンラッド役の弾ける魅力のイーゴリ・ツヴィルコでしょうか。このように次のスターを発見することができるのも、ボリショイ・バレエ・イン・シネマの楽しみですね。


 



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