ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2019 – 2020 アンコール上映決定!

海外では今年10周年を迎え、これまでに世界中で38公演/70カ国/1,700館の上映を誇り、延べ35万人を動員した「ボリショイ・バレエ in シネマ」

モスクワのボリショイ劇場で鑑賞しているような臨場感あふれる舞台、そしてバックステージの独占映像と幕間の出演者インタビューで最高のバレエ芸術を楽しめるボリショイ・バレエ in シネマ Season 2019 - 2020が、秋にBunkamuraル・シネマにてアンコール上映されます。
https://www.bunkamura.co.jp/topics/cinema/3869.html

「ジゼル」

ジゼル(出演:スミルノワ、ベリャコフ)/2020年 新収録・新演出
白鳥の湖(出演:スミルノワ、ティッシ)/2020年 新収録
ライモンダ(出演:スミルノワ、ベリャコフ)/2019年 新収録
くるみ割り人形(出演:シュライナー、チュージン)/2018年12月収録
ロミオとジュリエット(出演:クリサノワ、ラントラートフ)/2018年1月収録
海賊(出演:クリサノワ、ツヴィルコ)/2017年10月収録
「ロミオとジュリエット」

「白鳥の湖」

「くるみ割り人形」

【日程】
2020年10月9日(金)~29日(木)

※詳細スケジュールは後日、Bunkamuraル・シネマHPにてお知らせいたします。
 Bunkamuraル・シネマ:https://www.bunkamura.co.jp/cinema/

※各作品の詳細スケジュールは決定次第HPにてお知らせいたします。
【料金】全席指定 大人3,700円(税込)、学生2,500円(税込/要学生証ご提示)

特に、ラトマンスキー新演出による「ジゼル」は、大評判となったものです。6月に映画館上映された時の感想をここに書いておきますね。

ラトマンスキー版『ジゼル』は、セルゲイエフの舞踊譜をベースに、それより古いフランスのアンリ・ジュスタマンの舞踊譜も引用して作り上げられ、マイムを多用している。2幕に挿入されたジーグはラトマンスキーが想像力を駆使して創作したもの。特に特徴的なのは、アルブレヒトの婚約者であるバチルド姫がジゼルに同情的なキャラクターで心優しい姫であるという設定。これは原典通りなのだとのこと。

幕間のラトマンスキーの解説によると、貴族が高慢で冷酷であるというのはソヴィエト的な価値観で、ロシアでそのような設定になった後西側にも伝わったそうで、本来はバチルドは暖かい人柄。1幕のバチルドとジゼルがそれぞれの婚約者をどれほど愛しているのか語り合うガールズ・トークがかわいらしくて印象に残る。ジゼルとバチルドは1幕で仲良くなり、ジゼルの死にバチルドは動揺し涙する。

原典に準拠しながらも、ラトマンスキーの独創性が発揮されていて、ドラマティックな効果が生まれている演出。リュドミラ・セメニャカ演じる母ベルタによる「ウィリになってしまうわよ」マイムがとても雄弁。アルブレヒトは2幕の登場シーンでは、白い百合ではなく赤い薔薇の花束を持ってウィルフリードを伴っての墓参りをするが、ウィリフリードに支えられて罪悪感に押しつぶされている。

ウィリたちの作り上げる十字架の形のフォーメーションは怖くて美しい。陰陽の形をとったウィリの隊列を縫って素早く走るジゼルとアルブレヒト、アルブレヒトに支えられリフトされたジゼルは文字通り空を舞っているようで鮮やかな印象を与える。アルテミイ・ベリャコフの見事なサポート技術が発揮されている。2幕途中では、唯一のラトマンスキーが手がけたオリジナルな振付である、ミルタが踊るフーガが挿入されている。

オルガ・スミルノワのジゼルは、1幕の時から少しエキセントリックですでにこの世の人とはちょっと外れているようだ。ヴァリエーションのコーダの振付が普通よりかなり難しいものになっていた。狂乱のシーンは最初は思い出を辿っていく静かなところからどんどん狂い始め、その最期はなんだか凄いオフィーリア的な狂乱ぶりだった。

アルブレヒトのアルテミイ・ベリャコフが見事。長身容姿端麗、技術も演技力も素晴らしい。跳躍は高くつま先が綺麗、少しプレイボーイだけど情熱的なことこの上なく、激しくジゼルを愛していたことが感じられる。2幕ヴァリエーションはジゼルの墓の上に倒れ込む。ヴァリエーションの振付も、アントルシャ・シスが途中でたくさん挿入されており、軸足を途中で変えたり難しいものになっていた。

2幕のスミルノワは、この世のものではないような透明感をまとい、ひんやりとした中でもアルブレヒトへの想いを感じさせた。本当に涙を流していた1幕の狂乱のシーンですでに泣かせたのだけど、2幕は絶品。パ・ド・ドゥで二人は見つめ合い、温かくアルブレヒトに抱かれて最後にジゼルは顔を覆い涙にくれるのだ。

ジゼルは墓に消えるのではなくアルブレヒトに抱かれて横たえられ、いまわの際にバチルドとあなたは幸せになるのよとマイムをし、本当の死を迎える。慟哭するアルブレヒトにバチルドが歩み寄り手を差し伸べる。バチルドのネリー・コバヒーゼが美しく気品がありつつも、優しく温かい心を感じさせた。二人は一生ジゼルの死を背負って行かなければならないという十字架を負う。ハンス役のデニス・サーヴィンも切なく情熱的で素晴らしい演技を見せた。

このラトマンスキー版「ジゼル」は21世紀の傑作となると思います。ドラマティックで、人間味を感じさせて、考えさせられる。踊りのクオリティも恐ろしく高い。ぜひ映画館の大画面で!

『ライモンダ』も白い長いマントが似合うベリャコフ演じるジャン・ド・ブリエンヌが麗しいことこの上なく、ボリショイ・バレエならではのクラシック・バレエの粋が堪能できる贅沢な大作です。こちらもぜひ。



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