英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン ロイヤル・バレエ「コンチェルト」「エニグマ・ヴァリエーション」「ライモンダ3幕」

あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします!

いろいろと不安なことも多い新年の幕開けですが、皆様方にとっても素晴らしい一年になりますように。

1/17(金)より公開される英国ロイヤル・オペラハウス・シネマシーズン ロイヤル・バレエ「コンチェルト」「エニグマ・ヴァリエーション」「ライモンダ3幕」、先日試写を見せていただきました。
http://tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=concerto

すべて60年代に振付けられた3作品。マクミラン、アシュトン、そしてヌレエフ振付。英国バレエの多様性と伝統を感じるとともに、ショスタコーヴィッチ、エルガー、グラズノフと音楽的に優れた3演目でトリプル・ビルですがボリューム感もあり、ゴージャスな3本立てです。

「コンチェルト」 

【振付】ケネス・マクミラン

【音楽】ドミトリー・ショスタコーヴィッチ

【美術】ユルゲン・ローゼ
(第1楽章)アナ=ローズ・オサリヴァン/ジェームズ・ヘイ
(第2楽章)ヤスミン・ナグディ/平野亮一
(第3楽章) マヤラ・マグリ、 アナ=ローズ・オサリヴァン/ジェームズ・ヘイ、 ヤスミン・ナグディ/平野亮一
ピアノ:ケイト・シップウェイ

ショスタコーヴィッチのピアノ協奏曲2番を使ったプロットレスのバレエ。ピアノコンチェルトに乗せて、楽譜の上を駆け回るような第一、第三楽章、そして対照的に抒情的で美しい第二楽章。第一楽章では、6月に新国立劇場バレエ団の「不思議の国のアリス」に客演する新星、アナ・ローズ・オサリヴァンの才能に舌を巻きます。素晴らしい音楽性とテクニックの持ち主です。第二楽章では平野亮一、ヤスミン・ナグディのバーレッスンを思わせる、ゆっくりとして滑らかで澄み渡るような動きにうっとりと酔う。第三楽章のハイスピード感は楽しい。第一楽章のオサリヴァン、ヘイが再登場し、マヤラ・マグリが加わっての大人数の群舞を従え、生き生きとしてダンスの饗宴そのもののクライマックス。ピアノの音色も最高です。

「エニグマ・ヴァリエーション」

【振付】フレデリック・アシュトン

【音楽】エドワード・エルガー

【出演】エドワード・エルガー:クリストファー・サウンダース
キャロライン・エルガー夫人:ラウラ・モレーラ
ヒュー・デイヴィッド・スチュアート・パウエル:ポール・ケイ
リチャード・バクスター・タウンゼンド:フィリップ・モーズリー
ウィリアム・ミース・ベイカー:リース・クラーク
イザベル・フィットン:ベアトリス・スティクス=ブルネル
アーサー・トロイト・グリフィス:マシュー・ボール
ウィニフレッド・ノーベリー:ロマニー・パイダク
A.J.イェーガー(ニムロッド):ベネット・ガートサイド
ドーラ・ベニー(ドラベラ):フランチェスカ・ヘイワード
ジョージ・ロバートソン・シンクレア:アクリ瑠嘉
ベイジル・G・ネヴィンソン:エリコ・モンテス
レディ・メアリー・ライゴン:イツィアール・メンディザバル

(写真は今回の上演のものではありません)

この「エニグマ変奏曲」を作曲した時のエルガーを取り巻く友情と人間模様が描かれる。まだ知名度も低く自信喪失気味のエルガーが、著名な指揮者からの電報を不安気に待つ間、妻や友人たちが集まって彼を励ます。14の変奏曲があってそれぞれソロダンスがあり、一人一人の登場人物の個性がアシュトン特有の舞踊語彙を駆使して描かれる。マシュー・ボールが超絶技巧を見せるぶっきらぼうなトロイト、吃音をダンスで表現したフランチェスカ・ヘイワードの愛らしいドラベラ、そして名曲ニムロッドなど見せ場は多い。アクリ瑠嘉さんの、途中から犬になってしまったシンクレアの可笑しくも超絶なソロも楽しいけど、やはりクリストファー・サウンダーズがいぶし銀の演技で魅せるエルガーとラウラ・モレーラ演じるエルガー夫人、そしてベネット・ガートサイド演じる友人の三人がベートーヴェンについて語り合う夏の夕べの「ニムロッド」は心に残る。

「ライモンダ 第3幕」 

【振付】ルドルフ・ヌレエフ (原振付:マリウス・プティパ)

【音楽】アレクサンドル・グラズノフ

【出演】ライモンダ:ナタリア・オシポワ
ジャン・ド・ブリエンヌ:ワディム・ムンタギロフ
チャルダッシュ イツィアール・メンディザバル、リース・クラーク
第1ヴァリエーション 金子扶生
第2ヴァリエーション ミーガン・グレース・ヒンキス
第3ヴァリエーション クレア・カルヴァート
パ・ド・トロワ アシュリー・ディーン、イザベル・ガスパリーニ、ロマニー・パイダク
パ・ド・カトル アクリ瑠嘉、セザール・コラレス、ヴァレンティノ・ズケッティ、ジェームズ・ヘイ
第4ヴァリエーション  ベアトリス・スティクス=ブルネル
第5ヴァリエーション ワディム・ムンタギロフ
第6ヴァリエーション ナタリア・オシポワ
【指揮】パーヴェル・ソロキン

【上映時間】3時間9分

「ライモンダ」はルドルフ・ヌレエフ版。パリ・オペラ座バレエで全幕が振付けられるずいぶん前に、ヌレエフは3幕のみをロイヤル・バレエに振付けた。オペラ座のジョージアディスのデザインほどではないにしても華麗な衣装と舞台装置には息をのむ。ナタリア・オシポワとワディム・ムンタギロフ主演なので素晴らしいことは観る前から保証付き。ムンタギロフのジャン・ド・ブリエンヌは、これほどまでのレベルのクラシック・バレエを観る機会はめったにないのではと思うほど完璧、軽やかな跳躍、美しいつま先と柔らかい着地、エレガンス。パリ・オペラ座へのヌレエフ版「ライモンダ」への客演がストでなくなってしまったのが惜しまれる。オシポワのライモンダは外連味たっぷり、とにかく強靭で迫力あり。特にパ・ド・ブレとコーダのところの緩急をつけた連続パッセなどのポワントワークが本当にお見事だし、本人も楽しんで踊っているのが伝わってくるのが良い。

チャルダッシュのリース・クラークは脚が長くて、民族舞踊のステップもよく似合う。そしてヴァリエーションが4つ入る豪華版、中でも第一ヴァリエーション、ピチカートで踊る金子扶生さんの優雅さと音楽性は特筆もの。パ・ド・カトルのメンバーがまた豪華。アクリ瑠嘉、セザール・コラレス、ジェームズ・ヘイ、ヴァレンティノ・ズケッティ。中でもやはりセザール・コラレスは一段と跳躍が高く、突出して素晴らしいので際立つ。瑠嘉さんは3演目全部に出演と大活躍。指揮はミハイロフスキー・バレエの来日公演にも来たパーヴェル・ソロキン。クラシックバレエの神髄を堪能した。

<劇場>

北海道 札幌シネマフロンティア 2020/1/31(金)~2020/2/6(木)
宮城 フォーラム仙台 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
東京 TOHOシネマズシャンテ 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
東京 TOHOシネマズ日本橋 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
東京 イオンシネマ シアタス調布 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
千葉 TOHOシネマズ流山おおたかの森 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
神奈川 TOHOシネマズららぽーと横浜 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
愛知 TOHOシネマズ名古屋ベイシティ 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
京都 イオンシネマ京都桂川 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
大阪 大阪ステーションシティシネマ 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
兵庫 TOHOシネマズ西宮OS 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)
福岡 中洲大洋映画劇場 2020/1/17(金)~2020/1/23(木)



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