スタジオ・アーキタンツ設立20周年記念事業 ARCHITANZ 2020と「ブライト・ステップ×アーキタンツ トレーニング・プログラム」

2001年4月に設立されたスタジオ・アーキタンツ。現在に至るまで365日毎日クラスを開講し、毎年海外の第一線で活躍している一流講師陣を15~30名ほど招聘しています。夏休みや冬休み期間中を中心に、内外で活躍するプロのダンサーが多くクラスを受講する一方で、初心者向けのクラスや能のクラスまであります。来年からは若手育成のための「アーキタンツ・トレーニング・プログラム」も開講します。

また、多様なコンテンポラリー・ダンス作品を学ぶことができるワークショップを開催するだけでなく、劇場公演やスタジオパフォーマンスも開催。海外からトップダンサーを招いて、先鋭的な作品を上演する意欲的な公演は高い評価を得ています。

2020年に、アーキタンツは設立20周年を迎え、「ARCHITANZ 2020」 および 「ブライト・ステップ×アーキタンツ トレーニング・プログラム」という二つの劇場公演を行います。

その記者発表に先日行ってまいりました。参加者は、ダンサーの酒井はなさん、菅井円加さん(ハンブルク・バレエ)、西島勇人さん(ブライト・ステップ代表、ポーランド国立ポズナン歌劇場バレエ団)、そして振付家/指導者のジョヴァンニ・ディ・パルマです。

アーキタンツの福田代表より、アーキタンツの沿革(建築家である福田さんが設立し、建築スタッフ7名とスタジオ9名のスタッフを擁している)が語られました。Architecture とTanz(ドイツ語でダンス)を合わせてアーキタンツと名付けられています。ロゴもコンパスとダンサーを合成したイメージとなっています。

「ARCHITANZ 2020」で上演される、ウヴェ・ショルツの「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」を、ジョヴァンニ・ディ・パルマ菅井円加さんを指導するデモンストレーションがありました。さすがに菅井さんは飲み込みが非常に早く、勘が優れているのが見て取れ、美しく音楽性豊かに動いていました。この作品は、2011年の「ARCHITANZ2011」で日本初演され、また2013年の「ローザンヌ・ガラ2013」でもアーキタンツにより上演された作品です。菅井さんが今回踊るパートは、その時は酒井はなさんが踊ったパートです。

ブライト・ステップ代表の西島勇人さんが、まずは「ブライト・ステップ×アーキタンツ トレーニング・プログラム」 について話しました。「ブライト・ステップ」は、今年5周年を迎えた、海外で活躍する若手ダンサーによるガラ公演で、西島さんが主導しながら年々参加ダンサーが増えて今年はついに20人以上が参加、手作りの温かさを保ちつつも高いレベルのパフォーマンスで、見逃せないものとなっています。今年の公演も素晴らしいものでした。

西島「7年前に、「ローザンヌ・ガラ2013」の「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」に出演予定でしたが、リハーサル中に大けがをしてしまい、最初は普通の生活を送るのも困難で、復帰には2年ほどかかってしまいました。入院生活を送る中で、仲間のダンサーたちに励まされ、同世代の人たちとやっていきたいという思いを感じました。おかげで復帰を果たし、リハビリ中に仲間にバレエへの想いを打ち明けてブライト・ステップが始まりました。クラウドファンディングでお金を集め、7人のダンサーで始めた公演も今年5周年を迎えることができました。もう少し若い世代へのワークショップを提供したり、目標を届けられたらと思い続けてきました。来年は、アーキタンツと共同で公演できることに感謝し、恩返ししたいという思いがあります」 

次に、今までのアーキタンツ公演で振付指導などで活躍してきたジョヴァンニ・ディ・パルマ

「アーキタンツとのコラボレーションは15年になり、今回は集大成となります。2011年に福田代表と、もう少しコラボレーションワークをしたいということになり、ウヴェ・ショルツの作品をここに持ってこようとしました。日本のお客さんにショルツを体験してもらいたいと思ったのです。スタートはクレイジーだったけど、次第に成功へと導かれて行きました。この公演を通してショルツの作品が知られるようになり、他のカンパニーからも彼の作品を踊りたいと来て、他の彼の作品も上演される運びになりました。「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第2番」や彼の遺作となった「春の祭典」などです。ここで上演にこぎつけて、酒井はなさんのような素晴らしいダンサーが踊るようになり、一緒に旅するような作品です。人生の体験を一緒に旅していくのが、「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」です。今回は2011年の公演を反映させ、エモーショナルな公演となります」

「また、マルコ・ゲッケの作品もアーキタンツで上演されてきました。「モペイ」「火の鳥」を酒井はなや西島勇人が踊ってきました。今回は「薔薇の精」を踊ってみたらどうかと思いました。パ・ド・ドゥだけでなく、完全な形での上演となります。ゲッケは大事な振付家なので、公演も大事になります。モンテカルロ・バレエで初演され、シュツットガルト・バレエ、ナショナル・バレエ・オブ・カナダに続いての上演であり、また酒井はなさんが踊ります。これもエモーショナルな舞台になると思います」

アーキタンツ公演では欠かせない、日本を代表するプリマ・バレリーナの酒井はな

「ジョヴァンニは素晴らしいダンサーであって、とてもダンサー想いの人、親身になり助けてくれて感謝するばかりです。福田さんとも長いご縁なのも幸せなことです。家族のような気持ちでここに通っています」

『薔薇の精』は「火の鳥」「モペイ」に続き、ゲッケの作品に挑む3回目の機会となります。20周年記念という記念すべき舞台で大作の上演、日本初演作品を踊らせていただき感謝しています。とても大変な作品で、心して挑みたいと思います。「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」の私が踊ったパートは菅井円加さんが踊ってくれるのもとても嬉しいです。私は2013年に西島さんのお母さんが踊ったパートを踊ります」

今年の夏は、オーチャード・バレエ・ガラ、横浜バレエフェスティバル、ブライト・ステップと大活躍した菅井円加さん

「はなさんという素晴らしくきれいなダンサーの後継の役なので、今から気合を入れなければなりません。ジョヴァンニとは3回リハーサルをしました。ストーリー、感情面の細かい指導もしていただきとても勉強になりました。1年間、ハンブルクでしっかり練習をして足を引っ張らないように喝を入れたいと思います」

<質疑応答>

Q.今回、「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」を踊ってみてみえてきたものは?
菅井「ソロはアダージオです。印象は結構色っぽく、上半身がとても動いていてセクシーでアクセントがあり、しっかりとしたポジションや伸びが要求されますね」

Q.このアーキタンツのような独自のシステムは海外ではありますか?

ディ・パルマ「アーキタンツは劇場ではなくて、付属ダンスカンパニーでもありません。ダンサーとより近くインフォーマルなかかわりをしています。ダンサーと私たちの関係性が近いのが特徴です。カチッとしていなくて緩やかなので、自分でダンサーを選ぶことができます。福田さんと同じ考えを持って進めています。近しいので親しい関係を創ることができるという利点があります。求められるのは高い芸術性を持っていることであり、発表会ではありません。コール・ドでもお互い刺激を与えながらやっていくことが求められています。お互いを刺激し合って成り立っています。アーキタンツからは振付に対するリスペクトを感じています。ほかの劇場ではない、公演ごとに感情的にしっかりとしようというのが見えてきます。そこからいいものが生まれてきます。いい気分になりながら作品創りができます」

Q。「ブライト・ステップ」の良さは?

菅井「楽しくやらせていただいています。どんどん出演者も若くなっているので、若いエナジー、いいエナジーを受けています。いろんなカンパニーのダンサーが出演しているのでとても勉強になりますし、交流することで情報交換しています。楽しく、人の輪が広がる感じで、共感できることが多いので、貴重なガラです」

西島「菅井さんは常に明るいムードメーカーで、リハーサル中も明るい同世代のダンサーが集まってきます。所属先の苦労もありつつ、他のダンサーを見て勉強しています。今のダンサーはみんな上手で、年齢層も若くなっています。17,18歳という若い年齢のダンサーもいますが、すでにカンパニーに入って活躍しています。彼らが成長する姿を共有し、若い人たちへのアドバイスをしています。一年前には教室や留学で近い存在だった人たちから刺激をもらっています。」

Q「ゲッケ版『薔薇の精』の難しさとは?

酒井「振りが多くて難しい作品です。1秒の間に2,3の動作が入っていてものすごい速さです。マルコの形を習得し、身体にしみこませ、何も考えないで身体が動くようにしなければなりません。ですがとても気持ちが良くてダンサー自身が見えてくる振付です」

Q「「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」について」
ディ・パルマ「90年代にショルツがチューリッヒ・バレエの芸術監督をしていた時代に創作された作品です。3番は一番難しいピアノスコアです。プリンシパルはピアノで群舞はオーケストラです。ウヴェの魂の旅であります。目的意識を持って臨まないといけない作品です。ピアニストは単に舞台に上がり演奏することはできません。ピアニストは自分を失わなければなりません。そしてダンサーも同じで、全員がそうですが、特にプリンシパルダンサー、酒井はな、奥村康祐、菅井円加、根岸澄宜、八幡顕光は、このバレエが始まった頭から終わりまで、自分を失うほど表現を見せて行きます。それはテクニックや何か効果的なことを考えるのではなく。すべてが、自分を出し切るまで踊るもので、ステップをどう踏むかではなくどうしたら何かを出せるか、どうやってダンスを通して観客を感動させるエネルギー、ダイナミックさ、内に秘めたものをすべてさらけ出すようにしなければなりません。このバレエは観客が楽曲を見ることができなくてはなりません。ピアニストがこの作品を演奏するのとまったく同じように皮膚の中に入らなければなりません。このバレエは観客が楽曲を見ることができなくてはなりません。楽曲と目の前で展開されているシーンの両方が皮膚の内側に入っていなければなりません。みなさん頑張ってください!」

「(八幡)顕光の場所は2楽章のカデンツァで、(酒井)はなのパートはクリエイティブでクレイジーです。エモーショナルなパートです。感慨深い公演になることでしょう」

最高のダンサー陣を揃えて日本初演作品や新作を揃え、本当に楽しみな2公演です。

会見では冒頭に触れられただけですが、ARCHITANZ 2020では、ドイツ・レーゲンスブルグの芸術監督として活動し、振付家としてもヨーロッパでも評価の高い森優貴さんの新作『ボレロ』が上演されるのも、注目点の一つです。

スタジオアーキタンツ 20周年記念公演
ARCHITANZ2020

[公演概要]


日程(予定):2020年8月8日(土)・9日(日

会場:新宿文化センター 大ホール

[プログラム | ゲスト出演予定]

「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」 ウヴェ・ショルツ振付
(振付指導:ジョヴァンニ・ディ・パルマ)
▷2011年のアーキタンツ10周年記念公演でウヴェ・ショルツの大作を日本で初めて上演。この公演が話題となり、ウヴェ作品が日本で上演されるきっかけとなった作品「ラフマニノフ・ピアノコンチェルト第3番」を菅井円加と奥村康祐により再演。
ゲスト出演:奥村康祐、近藤美緒、菅井円加、根岸澄宜、八幡顕光
      酒井はな
他、オーディションで選ばれた出演者
(*オーディション開催概要はコチラ


「薔薇の精」 マルコ・ゲッケ振付
(振付指導:ジョヴァンニ・ディ・パルマ)
▷マルコ・ゲッケ作品は、今までにも「モペイ」「火の鳥」「春の祭典」を上演。今回は「薔薇の精」を、酒井はなと小㞍健太により日本初演。
ゲスト出演:酒井はな、小㞍健太
西島勇人、根岸澄宜、八幡顕光
他、オーディションで選ばれた出演者
(*オーディション開催概要はコチラ

新作「ボレロ Boléro」森優貴振付
▷日本人で初めてヨーロッパの公立劇場で芸術監督を務めた森優貴が、本公演のために新作を発表。元ノイズムの中川賢がゲスト出演します。
ゲスト出演:中川賢
他、オーディションで選ばれた出演者


「翁」 

▷能とダンス作品の企画制作は、アーキタンツが行ってきた実績のひとつ。オリンピック・イヤーならではの伝統芸能プログラムとし、古典能を上演。
「翁」は別格に扱われる祝言曲 古典能のショート・バージョン
津村禮次郎 他

<ブライト・ステップ×ATP> 公演概要

【公演概要】

◆東京公演
日程:202086日(木)
会場:新宿文化センター 大ホール

 ◆大阪公演
日程:20207月末(予定)
会場:未定

 出演予定ダンサー:西島勇人、奥村彩、菅井円加、他

【募集概要】

東京、大阪公演への出演を希望するジュニアダンサーを募集します。
世界の主要バレエ団で今まさに活躍中のブライト・ステップメンバーと、同じ舞台に立てる貴重なチャンスです。

◆ジュニア出演演目
眠れる森の美女ハイライト(ブライト・ステップ合同作品)、及びネオクラシック作品(ジュニア単独作品)を予定

◆オーディション日程・申込み方法
2019127日(土)、8日(日)
詳細はこちら!



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