K-Ballet Company「マダム・バタフライ」記者会見

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Autumn 2019『マダム・バタフライ』」の制作記者発表が開催されました。

今年で創立20周年を迎えるK-Ballet Companyによる本作は、熊川哲也さんが振付ける、ジャコモ・プッチーニのオペラ「蝶々夫人」を原案とした世界初演のバレエ作品です。K-Balletとしては初めて日本を舞台とした作品をバレエ化することになります。

http://www.k-ballet.co.jp/performances/2019madame-butterfly.html

熊川哲也さんは、西洋文化であるバレエの中に日本的な要素を入れることに大変苦労したとのことです。和の動きや史実を入れようとしたのですがそれは途中からは不可能であることに気が付いたとのこと。動きではなくて日本人の精神が作中で表現できれば、と語りました。

熊川さんは、リサーチを兼ねて長崎に旅行に行きました。外国人墓地に行き、開国されていない時代、まだ外国人との結婚が許されない時代にも確かに国境を越えた愛が育まれており、バタフライのモデルと思しきお菊さんという女性の存在も確認したとのこと。彼らの交流を描きたいと感じたそうです。

プッチーニのオペラ「蝶々夫人」はよく知られていますが、バレエ化にあたっては、オペラに基づく部分は半分もないとのこと。『カルメン』と違ってオペラをそのままバレエにするには登場人物が少ないため、ピンカートンの生い立ちや婚約者との関係も見せたいので、作品は最初アメリカから始まるそうです。また、花魁の場面では素晴らしい遊郭のセットを作り上げ、そしてピンカートンとバタフライの出会いの場面をしっかり見せて、二人の愛が育まれる様子も描くとのこと。ラストもオペラとは違った様子で描く予定。

(リハーサルの様子)

蝶々役のファーストキャストは矢内千夏さん。熊川さん曰く「天才的なセンスの持ち主でバレエの申し子である」とのこと。「日本人だからこそ感じ取れる、それを表現できる心情や繊細な動きなど、そういうものを自分の中で大切に表現できたら、と思っています」

中村祥子さんは、蝶々と花魁の二つの役を演じる予定です。蝶々役については自分自身と一致する部分が見つからないきがして、とコメントしていましたが、果たしてどうなるか。熊川さんは「心身ともにピークを迎えている」と中村さんについて評していました。

そしてピンカートンを演じる宮尾俊太郎さんは、今回、振付助手として熊川さんをアシストします。意見が対立することはあるか、と聞かれて「12歳年上なので、それはないです」と笑いを誘いました。「申し分ないアシスタントです。俊太郎のことは20歳の時から知っているが、独立したマインドを持っている。背中を見せる立場の年齢になってきた」との熊川さんのコメント。ピンカートン役については「ブーイングをもらえるよう頑張る」そうです。宮尾さんは、常任振付 / レペティトールに就任します。

もう一人の蝶々役は、昨年9月に入団し、「シンデレラ」に続き2度目の主演に抜擢された成田紗弥さん。「透明感があり妖精のようなバレリーナ」と熊川さんは評していました。最初に発表されたポスタービジュアルのモデルは彼女です。「国籍や身分の違いを超える愛を、ステップや音楽に乗せて私が表現できるかというところが難しい」と謙虚です。

今後のK-Ballet Companyのビジョンとしては、「昨今の難しい時世の中で、古典芸術が心を豊かにするもの、みなさんの癒しになるような活動をしていきたい。幅広いレパートリーを手掛けて行きたい。2020年はオリンピックイヤーですが古典芸術はいろんな要素に流されず変わらず平常心で活動したい。2020年はレパートリーとしている全幕に加えて、9月に新制作を行い、宮尾俊太郎の第一回作品を発表します」とのことです。

本作の特別番組が8月25日13:00からBS-TBSで放送されるそうです。番組では、熊川さんが作品ゆかりの地である長崎を訪れ、歴史や文化を巡るとのことで、こちらも楽しみですね。

Tetsuya Kumakawa K-BALLET COMPANY Autumn 2019「マダム・バタフライ」

2019年9月27日(金)~29日(日)
東京都 Bunkamura オーチャードホール

2019年10月10日(木)~14日(月・祝)
東京都 東京文化会館 大ホール

演出・振付・台本:熊川哲也
原案・音楽:ジャコモ・プッチーニ(オペラ「蝶々夫人」)
舞台美術デザイン:ダニエル・オストリング
衣裳デザイン:前田文子

キャスト

マダム・バタフライ:矢内千夏 / 成田紗弥 / 中村祥子
ピンカートン:堀内將平 / 山本雅也 / 宮尾俊太郎
スズキ:荒井祐子 / 井上とも美 / 山田蘭
花魁:中村祥子 / 山田蘭 / 杉山桃子
ボンゾウ:遅沢佑介 / 杉野慧
シャープレス:スチュアート・キャシディ



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