エイフマン・バレエ来日記者会見

21年ぶりに来日した、ボリス・エイフマン率いるエイフマン・バレエ。7月13日のびわ湖ホールでの「アンナ・カレーニナ」公演を皮切りに、21日の東京文化会館での「アンナ・カレーニナ」まで6公演を行います。

https://www.japanarts.co.jp/eifman2019/

東京公演「ロダン」を前に、7月17日に記者会見がロシア大使館で行われました。出席したのは、芸術監督で振付家のボリス・エイフマン、「ロダン」でタイトルロールのオレグ・ガブィシェフ、同じく「ロダン」でカミーユ・クローデル役のリューボフィ・アンドレーエワ、「ロダン」で、ローズ・ブーレ役のリリア・リシュクの4人です。

ボリス・エイフマン「今日来日したばかりです。ドキドキしてバレエ団の歴史を振り返りながらホテルに向かいました。90年代初頭、ロシアは困難な時代でソ連の外にやっと出始めたペレストロイカの時代でした。ジャパン・アーツに声をかけていただいて来日公演をできたのは大きなプレゼントでした。当時日本で公演できたことは私たちの自信の源であり、私たちの道は正しいと方向づけてくれました。それから20年間日本に足を踏み入れることはなかったのです。今回は、エイフマン・バレエが帰ってきたのではなく、ボリス・エイフマンが帰ってきました。皆さんの知らない新しいエイフマン・バレエが日本に来たのです。世界各地のツアーで大きな成功をおさめ、世界屈指のバレエ団として日本に乗り込んできました」

 

「今のエイフマン・バレエは、素晴らしい芸術家が揃っています。素晴らしいテクニックを持っているだけでなく、アクターとして素晴らしい演技を見せてくれます。ほかのどのようなバレエ団にもないと思います。みなさんの心を動かすに違いありません。ロシア・バレエの伝統と共に心理バレエ、感情を持つバレエという魅力を持つエイフマン・バレエは日本の皆さんの心を打つはずです。人の魂は世界共通だと思います。私たちはサンクトペテルブルグでロシア文学についての作品をつくったりしていますが、日本の皆さんもアメリカの皆さんも作品を理解してくれます。心、魂は一つなのです。21世紀においてバレエ文化はもっと発展していくと確信しています。もっと求められるようになるはずです。バレエの他に、みんなの精神を融合し世界を一つにしているものはありません」

「エイフマン・バレエでは、『アンナ・カレーニナ』『ロダン』を今回日本で上演しますが、常時10~12演目が上演され常に改訂されています。なぜこの2作品で来日かというと、私たちの探求心、バレエ団とバレエ芸術の可能性を感じてもらえる演目だからです。難しい時期に背中を押してくれたジャパン・アーツには心から感謝しています。私たちは新しいカンパニーとして戻ってきました。観客も20年前とは変わっています。新しい形のロシア文化を、バレエ芸術のリーダーとして提供したいと思っています」

リューボフィ・アンドレーエワ「今回は初来日で緊張しています。『ロダン』は7月15日にすでに静岡で上演されましたが、古典とは程遠い作品なのでどう受け入れられるか不安に思っていましたが、温かく受け入れられてもらえてうれしく思います。『ロダン』を踊った後、何人もの観客の方が心を動かされたと語り泣いていました。とても嬉しく思いました。エイフマンはその手腕で、こんなにも心を動かせる方です」

オレグ・ガブィシェフ 「踊りの言葉は世界共通で、これを話せることを誇りに思っています。お客さんがとても集中していて、苦悩を一緒に感じてくれていることを感じました。初演から8年がたち、この役を踊り続けています。磨きに磨き、ここまで仕上げてきました。ほかの作品もそうですが、ゴールはありません。常に進化し続けていて、毎回発見があります。上演を重ねるたびにニュアンスを積み重ねています。ロシア現代バレエがいかにハイレベルかを見せたいと思います」

エイフマン「ひとこと付け加えると、現代バレエ、古典バレエと出てきますが、我々の芸術と呼びたいと思います。モダン・バレエでもなく、わたしたちのバレエ、新しい形のバレエ芸術であり、ドラマ、心理が一緒になっていろいろな感情が呼び起こされるものです。今の人が本当に忙しい中わざわざ足を運んでくれます。人々の心理を見たいという人が観てくれます。私たちは、古典、モダンというレパートリーを外して、個性的なレパートリーを誇っています」

リリア・リシュク「私は初来日ではありませんが、日本は大好きです。歴史や文化も尊敬していますし、日本の方は特別だと思っています。みなさんの思いやりの心は他の国ではなかなかありません。『アンナ・カレーニナ』も『ロダン』も強い心理を描いた物語です。『ロダン』はありふれた伝記ではなく、愛憎劇、自己犠牲を伴う愛を描いています。美しい肉体やダンスを見せているだけでなく、彫刻にインスピレーションを得た作品です。二人の素晴らしい芸術家の人生がエイフマンによって描かれています。私が演じるローズ・ブーレもロダンのインスピレーションの源であったとバレエを見て感じてください。いかに人間の身体から彫刻を作り出してきたのかも見せています」

<Q&A>

エイフマンが設立したボリス・エイフマン・ダンス・アカデミーについて

エイフマン「アーティストの選抜は難しいプロセスです。ほぼ毎日インターネットを見て素晴らしいダンサー、しかも俳優性があるかどうかを見て探しています。美しく、背が高く、若いという条件で団員を探していますが、年々難しくなっています。アカデミーも6シーズン目となりました。エイフマン・バレエで活躍するための教育をしています。早くからモダン・バレエ、現代バレエの要素をふんだんに教え、個性的なバレエ・アーティストとして育てています」

海外ツアー公演について

エイフマン「エイフマン・バレエが日本に来なくなって20年経ちましたが、その間、アメリカに非常に頻繁に呼ばれました。20年間でニューヨークで17回も公演を行っています。劇場(シティ・センター)のレジデント・カンパニーだったので、世界初演作品をニューヨークで上演したこともあります」

作品の改訂について

エイフマン「私の良くない癖です。42年間カンパニーを率いていてきて、10年、15年前に創った作品を観るともっとこうしたほうがいいと思って手を入れてしまいます。『チャイコフスキー』はほとんどの部分を改訂しています。新作を作ったほうがいいと言われますが、博物館ではなくその時代にそぐうものでなければならないと思っています。20世紀後半に創られた作品も今の作品にして、20世紀を今の時代に引っ張っていきたいと思います。踊り手も変わるしアーティストも変わってきています」

エイフマン作品を踊る醍醐味とは?

リューボフィ・アンドレーエワ「3年間古典バレエをミンスクで踊っていて、モダン・バレエは避けていました。『赤いジゼル』を観て衝撃を受けて言葉を失ってしまい、他のバレエ団で踊る気持ちは失せてしまいました。振付を踊っていても踊るたびに気持ちは毎日違います。感情も毎日違いますしパートナーによっても異なります。踊るのではなく2時間ヒロインを生きる気持ちで舞台に立っていて、わくわくしています。新しい自分を発見することができるからです」

オレグ・ガブィシェフ 「私は初来日はノヴォシビルスク・バレエの『くるみ割り人形』で、コール・ド・バレエだけでなく準主役も踊ったのですが10回同じ作品を踊って非常に苦痛でつまらなく思いました。その後ノヴォシビルスクにエイフマン・バレエが来て全く新しい世界が広がりました。技術的にも感情的にも、絶対にこんなことは自分ができない、無理だと思いました。振付、舞踊言語が特別でした。知っている「くるみ割り人形」の世界から全く違う、アーティストが100%完全燃焼する世界にくぎ付けになりました。挑戦状を突きつけられた気持ちになり、1年後アメリカ公演に参加しました。『アンナ・カレーニナ』を20回踊りました。コール・ド・バレエの一員でしたが、毎日新しいものを発見し、やりがいを発見しました。群舞であっても大切な主役の一人なのです。作品を作り上げるプロセス、新しいものが出来上がるところを見るとエネルギーの充電位になります。同時に責任感をひしひし感じます。大切な役割を創作プロセスの中で果たしていかないと感じます。アーティストとして発展できる、インテレクチャルで成長できるカンパニーだと思います」

リリア・リシュク「私はワガノワ・バレエ・アカデミーで学んでいて、マリインスキー・バレエで踊ることを夢見ていました。踊ることそのものが好きでした。エイフマンの人間としての魅力、大きな人間性を見て、一緒に夢を見届けたいという気持ちになりました。今も私はマリインスキーへの愛はありますが、それ以上にエイフマン・バレエが大好きです。演劇的なバレエを踊りたいという子どもの時からの夢がかないました。厳しい目で吟味されたアーティストとの共演で磨かれます。先生たちも、自分の身体を使って教えてくれていて、大きなやりがいがあります」

『ロダン』初日を観ましたが、エンターテインメント性にも優れており、本当に素晴らしかったです。よくダンサーのことを彫刻のような体、と表現するけど本当にダンサーを彫刻にしてしまうという思いつきそうで実際やった例はなさそうなことを、何のてらいもなく実現。石を削ったり粘土を捏ねたりするとダンサーが表現する彫刻に、彫塑プロセスもダンスの動きになっています。彫刻をダンサーの肉体で表現というのはある意味ベタなのだけど、視覚的にとてもわかりやすく、しかも実際に存在するロダンの彫刻の形になるのでセンスオブワンダーを感じる。主演3人の力量はダンスも表現も素晴らしく、カミーユとローズの舞踊言語が違うのもわかりやすい。 ロダンは、長年の内縁の妻ローズと、才能ある彫刻家カミーユ・クローデルの間で揺れるのだが、実際にはこの二人の女性にはあまり興味がなくて、クリエーションのみに情熱を注いでいるように見受けられた。ローズには愛情が無さそうだし、カミーユはその才能ゆえに惹かれるが、結果的に彼女から全てを奪ってしまう。(その様子も残酷なまでに振付で描かれます)

特にカミーユ・クローデル役のリューボフィ・アンドレーエワが身体能力も表現力も凄まじい。彫刻を作っている場面は本当に情熱に突き動かされて一心不乱に創造しているようだし、こんな風に人の身体は曲がるんだ、動けるんだという壮絶な踊りを見せてくれた。狂気の表現も一筋縄ではなく複雑な心理描写を身体を使って雄弁に表現した。エイフマンの振付らしい、超絶リフトももちろん多数登場するし、2人の女性ダンサー相手にこれをダイナミックに行ったオレグ・ガビーシェフの力量も凄まじい。「カレー市民」ができ上がっていくプロセスにはわくわくするし、あの彫刻の体勢を保ったままのダンサーたちの身体能力も凄い。もちろん皆長身で美しい。 2幕中盤からの、カンカンが踊られる華やかな社交界で心が満たされず死んだようになっているカミーユ。ラストに狂気に沈み、狂った女性たちに手を引かれて上手へ去っていく姿の時のどこか安堵した彼女の表情。エイフマンはヒューマニストで、カミ―ユだけでなく、芸術家としては天才だが人間としては屑であるロダンに対しても、優しい人なんだと実感した。

エイフマンの名作中の名作、『アンナ・カレーニナ』も見逃せません!

 

アンナ・カレーニナ

(全2幕 / 休憩1回)

振付・演出:ボリス・エイフマン、原作:レフ・トルストイ
音楽:チャイコフスキー
上演時間:2時間
※演奏は特別録音音源を使用いたします。

公演日程

  • 2019.7.20[土] 17:00[開場 16:00 / 終演予定19:00]
  • 2019.7.21[日] 14:00[開場 13:00 / 終演予定16:00]

会場:東京文化会館

各公演の開演30分前より東京文化会館当日券販売窓口にて、 当日残席がある場合に、25歳以下は3900円となるお得なR25チケットが発売されます。以下をご確認の上、年齢を確認できる身分証明書をご持参ください。 
* 各公演の開演30分前より販売いたします。当日券が売切れになった場合は、取扱いございませんのでご了承ください。
* 一律 3,900円です。(お支払いは現金のみです。)
* 座席選択はできません。

 



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