ボリショイ・バレエinシネマ『カルメン組曲』『ペトルーシュカ』6月26日劇場公開、エドワード・クルグ独占インタビュー

ボリショイ・バレエ in シネマ Season 2018–2019では、6月26日(水)19:15開演 で『カルメン組曲/ペトルーシュカ』を上映します。

https://liveviewing.jp/contents/bolshoi-cinema2018-19/#goods

『カルメン組曲』は、おなじみのアロンソ版で、スヴェトラーナ・ザハロワがカルメン役、デニス・ロヂキン(ドン・ホセ)ミハイル・ロブーヒン(エスカミーリョ)と豪華な共演です。ザハロワの表現者としての進化ぶりと、美しい脚線美も堪能できる逸品です。

<カルメン組曲>
音楽:ジョルジュ・ビゼー、ロジオン・シチェドリン
振付:アルベルト・アロンソ
台本:アルベルト・アロンソ 原作:プロスペル・メリメ「カルメン」
出演:スヴェトラーナ・ザハーロワ(カルメン)デニス・ロヂキン(ドン・ホセ)ミハイル・ロブーヒン(エスカミーリョ)ヴィタリー・ビクティミロフ(コレヒドール)

もう一方の『ペトルーシュカ』は、今世界中の劇場で引っ張りだこの振付家、エドワード・クルグによる新作。

<ペトルーシュカ>
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
振付:エドワード・クルグ
出演:デニス・サヴィン(ペトルーシュカ)エカテリーナ・クリサノワ(バレリーナ)ドミトリー・ドロコフ(ムーア人)ヴィヤチェスラフ・ロパティン(魔術師)

映像を見せていただきました。

ストーリーはフォーキンの『ペトルーシュカ』とほぼ同じで音楽もストラヴィンスキーですが、演出はとても斬新です。ロシア的な味わいも持たせながら、とてもモダンでスタイリッシュな舞台美術と衣装。マトリョーシカ人形のような大きなオブジェ、ダンサーに繰り人形が括り付けられたりと視覚的に非常に面白いです。この手の一癖ある役柄はお手の物のデニス・サヴィンのペトルーシュカ、高度なバレエ・テクニックにモダンな感覚の持ち主のエカテリーナ・クリサノワ(バレリーナ)。そして特徴的なのが魔術師の役で、フォーキン版では魔術師は踊らない役ですが、こちらは、やはり超絶技巧の持ち主として知られるヴィヤチェスラフ・ロパティンがキャスティングされていて、そのテクニックと演技力の両方を生かした強烈なキャラクターとなっています。

フォーキン版のような、おもちゃ箱をひっくり返したような雑然とした雰囲気はありませんが、衣装はカラフルでとてもかわいい。ダンスもロシア的なモチーフを取り入れ、クルグの作品の中ではクラシック・バレエ寄りの振付。3というモチーフを取り入れたトリオのダンスが群舞でも多く見られます。

この「ペトルーシュカ」が好評だったため、来シーズン、エドワード・クルグは再びボリショイ・バレエに招かれ、新作「巨匠とマルガリータ」を振付けることになっています。

さて、このたび、当ブログのために、このエドワード・クルグがメールでインタビューに答えてくれました。映画館で観る前の予習にぜひどうぞ。

ボリショイ・バレエに作品を創作するのは初めてとのことですが、このバレエ団に作品を創るのはどのような経験でしたか?そしてあなたの振付スタイルにダンサーたちはどのように順応しましたか?

「外側からこのクラシック・バレエの神殿を見れば、強烈な印象を持つことでしょうし、私も最初はそう感じました。リハーサルを一週間おこなったら、ここもほかのバレエ団と大きくは変わらないと思うようになりました。お互いに敬意を払い、熱心に新しいプロジェクトに共に取り組んだのです。ダンサーたちは新しい挑戦を興味深く思ってくれて、「ペトルーシュカ」の新しい舞踊言語に少しずつ慣れてきました。

親しい友人が、初演を観た後でこのカンパニーはボリショイ・バレエではないみたいだね、と言ったのですが私はそれは褒め言葉だと感じました。反面、この「ペトルーシュカ」は私の今までのバレエ作品とは似ていません。それは、作品の主題ゆえにそうなったのです。この作品のスタイルはどんなものになるんでしょうか?と聞かれたら「ペトルーシュカ・スタイル」と答えていました。高度にクリエイティブで、かつ自然に新しいアプローチに取り組んだボリショイの素晴らしいアーティストたちと共に、この素晴らしいおとぎ話を新しく語ることが私のゴールだったのです」

この「ペトルーシュカ」のプロダクションデザインや衣装はとても美しく、モダンでありながらロシア的です。これらのデザインはどのような考えのもとに創られましたか?

「ロシア文化のイコンのエッセンスを取り入れて、新しい美的感覚でそれを強調し、『ペトルーシュカ』の再創作のために適した環境を作り上げることを意図しました。セット、衣装、振付、そしてもちろん音楽とすべての要素は、ロシアのフォークロアと伝統から生まれた要素を取り入れています。『ペトルーシュカ』の物語を作品のルーツであるロシアに持って帰ることを意図したこの新作に、それらの要素を合わせることが一番大きな挑戦でした」

この作品の振付はとてもユニークで、3人のダンサーという組み合わせを効果的に使い、さらに3人の主要なキャラクターが棒でつながったりして一緒に動くことがあります。2つの木の人形がダンサーにつながっている面白い表現も登場します。このモチーフのアイディアについて教えてください。

「この人形のアイディアは、メキシコに行ったときに人々が街角で2つの人形、前と後ろに一体ずつ体にくっつけて踊っているのを見て取り入れました。これらの人形は、人物とシンクロして動いて、魔法のようなダンスを作り上げていました。人形ではなくダンサー3人が繋がってシンクロして踊るという振付を創ったのです。

そのため、魔術使いが自分の人形たちを披露する有名なロシアの踊りでは、3体の人形(ペトルーシュカ、バレリーナ、ムーア人)が2本の棒でつながっているところを見せています。これらの棒は、人形たちを機械によって魔術使いが操っているということであり、人形たちは自由になろうともがいています。

作品の後半では、最後の仮面舞踏会に参加している3人のメーンのキャラクターがそれぞれ前後に木の人形を取り付けている様子が見られます。さらにペトルーシュカが死んだときには、これらの人形の一体が、まるで彼の木でできた魂のように上に現れてその魂を連れ去っていきます」

この『ペトルーシュカ』では、魔術師(シャルラタン)はフォーキン版のよりも重要性が増して、際立ったキャラクターとなっています。特に、素晴らしいテクニックを持ち演技力にも優れたヴャチェスラフ・ロパーティンがこの役に起用されたことが、最初は驚きでした。なぜ、この役は踊る役としたのですか?

「シャルラタンは、人形たちとの関係にもっと摩擦を作るために、より重要で意味を持たせた役にしました。オリジナルのフォーキン版を知っているスラヴァ・ロパーティンは、この役にキャスティングされた時に少々驚いていましたが、この役についてはまったく違った視点を持っていることを彼に説明し、彼はこのチャレンジを受け入れました。 このキャラクターを作り上げるためのプロセスはとても面白く、二人とも結果には大いに満足しています」

見た目はだいぶ違っていますが、この「ペトルーシュカ』はフォーキン版の台本にほぼ忠実に従っており、振付の中にも元の振付のエッセンスが残っていますね。

「『ペトルーシュカ』の音楽の物語性と、台本の強い構造を逃れることは難しいと思います。既存の物語の中に、同じおとぎ話を異なった言語と描写で語っているという印象を与えることで、私自身の自由な創造としました」

エドワード・クルグ

1973年ルーマニア生まれ。91年にルーマニア国立バレエ学校を卒業後、スロヴェニア国立マリボール・バレエ団に入団。2003年に同バレエ団の芸術監督に就任する。2005年に振付けた『レイディオ&ジュリエット』が高い評価を得て、彼の作品はマリインスキー劇場の白夜祭、アメリカのジェイコブス・ピロー・フェスティバルといった主要なフェスティバルで上演されるようになる。シュツットガルト・バレエ、チューリッヒ・バレエ、ロイヤル・フランダース・バレエ、ウィーン国立バレエ、キエフ・バレエなどのバレエ団に作品を提供し、2010年には黄金のマスク賞にノミネート。NDT2、NDT1にも作品を提供し、NDT2に振付けた「Handman」では2017年にブノワ賞にノミネートされた。

このクルグ版『ペトルーシュカ』はボリショイ・バレエのダンサーの優れたテクニック、表現力をモダンだけど難解ではない描写で描いた、非常にユニークで刺激的な作品です。6月26日(水)のみの上映ですが、ぜひご覧ください。

関東地方の上映劇場(その他の劇場は公式サイトをご覧ください)

東京都中央区TOHOシネマズ 日本橋050‐6868‐5060
新宿区TOHOシネマズ 新宿050-6868-5063
港区T・ジョイ PRINCE 品川03-5421-1113
世田谷区109シネマズ二子玉川0570-077-109
府中市TOHOシネマズ 府中050-6868-5032
神奈川県横浜市横浜ブルク13045-222-6222
川崎市TOHOシネマズ 川崎050-6868-5025
千葉県浦安市シネマイクスピアリ047-305-3855
埼玉県さいたま市ユナイテッド・シネマ浦和0570-783-856
愛知県名古屋市ミッドランドスクエア シネマ052-527-8808


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