冨士山アネット代表の長谷川寧の最新作『ENIAC(エニアック)』がいよいよ幕を開ける。冨士山アネットは、作品毎にクリエイターを集め公演を開催し、テキストより身体を起こす「ダンス的演劇(テアタータンツ)」手法を特徴としている。
『ENIAC(エニアック)』とはいったいどのような作品になるのか?長谷川寧がインタビューに応じてくれた。
―『ENIAC(エニアック)』=(世界初のコンピューター)のタイトルに込めた思いは?
当時の電子機械式計算機に比べて1000倍とも言われたENIACというコンピューター。それだけ聞けばただの「ハイスペックな機械」と言えますが、実際は毎日真空管は破裂し、それを修理するのに30分程を要したと言われています。
直しても直しても壊れ高みを目指そうとする姿に、ある種のアーティストの在り方の様なものを見出しました。当時の発明に掛かっていた莫大な徒労に向い続ける姿と、現代の芸術家の生き様を重ね合わせることはできないか、というところから『ENIAC(エニアック)』を創作したいと思いました。
― キャッチコピーの「あなたはいつまで踊り続ける事が出来ますか?」からすると出演者がずっと踊り続けるハードな構成になるのだろうか?
「踊り続ける」というのは単に耐久性のことではありません。そして踊り続ける、という事からダンスを考えてしまいがちですが、これはダンサーだけでなく、すべての職業の方にも当てはまる作品だと思います。
”あなたはいつまで踊り続ける事が出来ますか?”そこに含まれる色々な意味について考える舞台になると思います。
― インド・ジャワ舞踊家/コンテンポラリーダンサーの石本華江の演出・出演のきっかけは?
今まで冨士山アネットの公演に出演者としてもドラマトゥルクとしても参加してもらっていました。石本は様々な国で滞在制作を繰返すアーティストですが、舞台上で彼女の現在の生活や問題点、現状などを見つめることによって描き出される「アーティストの実態」を彼女を通じて描き出すことができるのではないかと考えました。
― 本公演はストーリー性のある舞台になるのだろうか?
本公演のストーリーは、石本華江の半生をベースにして語られます。彼女の踊りを見つめ、彼女の踊る理由から生活を、質問と対話を交え描き出す作品になると思います。そこに私はデュオの相手として存在し、ときに彼女に肉薄します。
本公演は、「あなたはいつまで踊り続ける事が出来ますか?」の問いにおける「答えの在り方」を探っていく作品となります。
いつまで自分は踊り続けられるのだろう、これからどうしたらいいのだろう、と思っている踊り手たち、それだけでなく自分の仕事や生活に一度でも疑問を感じたことのある、すべての方に当てはまる身につまされる作品になると思います。
C) Hideki Namai