フィリップ・ドゥクフレ、来日公演「新作短編集」について語る

フィリップ・ドゥクフレ / DCA の『新作短編集(2017)ーNouvelles Pièces Courtes』が、6月29日に開幕します。

http://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/4871

サーカスと映像トリックとダンスとが交錯する奇想天外な演出で知られ、またアルベールビル・オリンピックの開会式も演出した、フランスを代表する世界的アーティスト、フィリップ・ドゥクフレの最新作です。今回は彩の国さいたま芸術劇場での公演の他、福岡とびわ湖でも公演があります。

公演に先駆けて来日したフィリップ・ドゥクフレを先日取材させていただきました。彼の語る楽しいアイディアの数々に、公演への期待が高まります。ミュージカル『ドラ-百万回生きた猫』、日仏中の国際共同製作『イリス』、そして楳図かずお原作の『わたしは真悟』と日本での舞台や共同制作などもあり、なんとこの30年間の間に、40回も来日しているというほど日本に縁があります。

まずは、今回の『新作短編集』について語っていただきました。

「『新作短編集』は、5,6の小品から構成されています。なぜ短編集かというと、若いころ観ていたアメリカのモダンダンスは短い作品が多く、小さいモジュールをパズルのように組み合わせたものが多かったからです。今回は敢えて一つにまとめずに短いままでお見せします」

「一つ目のパートは、音楽とダンスの関係についてのものです。2人の出演者はダンサーであり、また歌も歌い、男性ダンサーはピアノを弾き、女性ダンサーはフルートを演奏します。歌って踊って演奏してアクロバティックな動きもするという挑戦があります」

「二つ目のパートは、両親へのオマージュを捧げた作品となります。5,6年前に父は亡くなりましたが、ミステリアスな人で、深い穴のような知識を持っていました。そのため穴を舞台に作ることができる劇場で上演します。オマージュではあるのですが、作品自体からはそれがオマージュなのかはわからないと思います」

「3つ目は、ヴィヴァルディの曲に合わせた純粋なダンス作品です。ポスター写真にも使われていますが、アフリカの部族からインスピレーションを得た、ニットの衣装をダンサーが着用しています。振付はネオクラシックです」

「4つ目は進化というテーマです。3台のカメラを駆使し、すべてライブ映像で投影し、空間の中でリアルなものとそうでないものが混乱を起こしています。何年か前にビデオのスタッフに依頼して時間をかけてやっと実現できたものです。また、演奏を録音した音に合わせて生で演奏するという趣向も行っています。ダンサーは映像を自分のクローンにして一緒に踊ります」

「最後の作品は、二つのパートに分けられるかもしれません。女性ダンサーは空中で演技を行い、男性ダンサーは床の上にあります」

「そしてこのパートの後半部は日本への旅を語っているものなので、日本での反応がとても気になります。旅に関する作品を作りたいと考えており、2年前に来日した時にダンサーたちに日本の要素を持って帰ってほしいと依頼しました。その記憶を基に作ったのです。日本は好きな国ですが、ミステリアスな国であり続けます。軽やかで愛をこめて面白く作りました。ボサノヴァの音楽を使用しています。日本とボサノヴァは意外な組み合わせに思えるかもしれませんが、表参道を歩いている時にボサノヴァが聞こえてきて、CDを買ったんです。この音楽は日本の想い出と結びついています」


Q。ドゥクフレさんはテクノロジーを駆使し、映像の魔術師として知られていますが、どこまでテクノロジーを使っていますか?

「最近、できるだけ生のものをお届けする方針で、ビデオを使いつつもライブ映像を併用していますし、音楽も最大限生の演奏を使っています。生のダンスや音楽を使うことでたくさんのバイブレーションを届けてお客さんと分かち合いたいと思っています」

「テクノロジーについては研究していますが、人間の身体より映像が目立つようではいけません。バランスをとるためによく見ていますし、機械の性能も良くなっているので、抑えめに使うようにしています。とにかく「生」が重要だと思っています。ダンサーを事前に撮影したものを使うとより美しく大きくなりますが、情報が大きくなりすぎるので、ライブ映像を使うことが重要だと考えています」


Q。「日本にはミステリアスな部分があるとおっしゃっていましたが、どんなところがミステリアスで、作品にどうやってそれを反映させていますか?」

「日本の人々がミステリアスだと感じています。感じたことがあっても直接見せないところがありますね。1996年に「DORA~百万回生きたねこ」を演出し、日本に対するミステリーが深くなり、理解できなかったけど恋に落ちました。

今回は大好きな歌舞伎へのオマージュも捧げています。特に坂東玉三郎を舞台で観た時のことが一番印象的でした。玉三郎が扇子を空中に投げるのですが、扇子の方を一度も見ないので、顎が外れるほど驚きました!今回は、このシーンを再現しますが、扇子を動かすダンサーが必要となりました。玉三郎のオマージュには見えないかもしれません。が、心を動かすものを作ることができたらと思って、空想力を駆使し、たくさんの尊敬の気持ちを込めています」

Q「アメリカのダンスに影響を受けたとおっしゃいましたが、具体的にはどのような作品ですか?」

「アルヴィン・エイリーやマース・カニンガムのダンスを学びました。彼らは短い作品を作る振付家です。そして母がダンス好きだったのですが、特にバレエ・リュスの作品が好きだったんです。バレエ・リュスも短い作品が多かったわけですが、例えば『春の祭典』は40分程度の作品ですがたっぷりとした内容があります」


Q.「今回ドゥクフレさんは舞台に立たれますね。どんなダンスをするのですか?ダンスを踊ることについて語ってください」

「複数のことをする予定です。何か月か前に出演者が亡くなったので代わりに私が踊ることになりました。まず「穴」の部分でソロを踊ります。また日本へのオマージュの作品の中で複数のことをします。日本スペシャルとして、坂東玉三郎にオマージュを捧げ、女役を踊る予定です。日本のキャバレーショーやニューハーフショーにもインスピレーションを得て、サイズ45の大きな靴で、高いヒールを履いて踊りますよ」

「ここ15年間の間でも、ソロを何回か踊っています。踊っている時期と踊らない時期がありましたが、今年、来年とソロを踊る予定になっていますし、踊るのは大好きです。なぜ踊るのが好きかというと、自分が指示を出す側をするので、踊る感覚を忘れないように舞台に立つ必要があるからです。また、舞台に立つことで素晴らしい感覚を経験できます。私にとって舞台に載って観客に会いに行くのがセラピーになっています。感情を美しいものに変換できるんです」


短編集ではありますが、特にコンセプトはなくて、それぞれの短編については異なったモチベーションを持って創作したとのことです。しかし一つ一つのパートがとても興味深く、マジカルな視覚効果やライブの音楽も毎回楽しいので、実際に舞台を観るのが待ちきれません。

【彩の国さいたま芸術劇場公演】

2018年6月29日(金) 19:00 開演
30日(土) 15:00 開演
7月 1日(日) 15:00 開演

※開場は開演の30分前です。
※演出の都合により、開演時間に遅れますとご予約席への案内ができない場合がございます。
 予めご了承ください。

※30日(土)公演終了後、カンパニーDCAメンバーによるポストトークの開催が決定!
 30日(土)公演チケットをお持ちの方はどなたでもご参加いただけます。

上演時間
約1時間30分(途中休憩なし)予定

会場
彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

演出・振付
フィリップ・ドゥクフレ

出演
カンパニーDCA

主催
公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団

後援
在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本

【チケット取扱い】
■SAFチケットセンター
・電話 0570-064-939(彩の国さいたま芸術劇場休館日を除く10:00~19:00)
 ※一部IP電話からは、ご利用いただけません。
・SAFチケットオンライン
https://www.ticket.ne.jp/saf/?_fsi=5XB8apw4

【福岡公演】

7月7・8日
福岡・北九州芸術劇場 中劇場
http://q-geki.jp/events/2018/dca2018/


【びわ湖ホール公演】

7月14・15日
滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール
https://www.biwako-hall.or.jp/performance/2018/06/08/dcanouvelle-piece-courte1.html




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