◆◆レビュー評◆◆文・渡辺真弓  <さいたまトリエンナーレ2016> 湯浅永麻演出『HOME』

     ~今年の掉尾を飾るにふさわしい強烈なインパクト~

 ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)の出身で、現在フリーで活躍している湯浅永麻のソロは、2016年のダンスシーンの掉尾を飾るにふさわしい強烈なインパクトがあった。会場は岩槻の古民家。入場料無料というのも懐が大きい。連日満員のところ、追加公演を観ることができた。

 <さいたまトリエンナーレ2016>の一環として、9月24日〜12月11日(土日の12日間計22回)に公演されたもので、会場となったさいたま市岩槻のK邸は昭和初期と思われる典型的日本家屋。中から物々しい音が響いてくると、40名ほどの観客は、玄関で靴を脱ぎ、和室へ通される。続きの和室が舞台である。この家のご先祖の遺影に、仏壇、古い鏡台、ブラウン管テレビなどが、ここに住んでいた人々の息づかいを伝える。ふと、子供の頃遊びに行った祖父母の家を思い出し、懐かしい気分にさせられた。

 この畳の密な空間で40分、自らを投げ出しパワー全開で挑む湯浅のソロが圧巻である。豊かな黒髪を振り乱してトランス状態に陥ったかと思えば、狐のお面に短いスカートを履いて妖しい乱舞で魅了。至近距離ならではの迫力を伝える。最後に、おびただしい数の自身の写真を部屋中にまき散らし、花吹雪のような光景を演出。自身の過去の記憶を呼び戻すと同時に、過去と決別し未来を見据えているようでもあった。演出・振付・音楽を手がけた、オランダ在住のピアニスト兼美術家の向井山朋子や、映像技術の遠藤豊とのコラボレーションも上々。未知の魅力を秘めた異色のダンサー、湯浅の今後の進展が期待される。

<2016年12月4日 さいたま市岩槻区K邸 / 文・渡辺 真弓>






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