◆◆レビュー評◆◆文・守山実花  新国立劇場バレエ団〈DANCE to the Future 2016 Autumn〉

   ~今後の展開に注目すべき価値あるラインアップ~

 新国立劇場バレエ団に所属するダンサーたちの振付作品を上演する〈DANCE to the Future 2016 Autumn〉の5回目となる今回、アドヴァイザーに中村恩恵を迎え、6作品(振付家4名)が上演された。

 まず挙げたいのは、宝満直也の『3匹の子ぶた』。ショスタコーヴィチの音楽とスパイスの効いた振付が、活き活きとストーリーを運び、ダレる瞬間がない。小野絢子、八幡顕光、福田圭吾の子ぶた兄妹、池田武志の狼とダンサーの個性と美質をよく理解した配役も見事。何より、ダンスが私たちに直接語りかけてくる。

 宝満のもう一つの作品『Disconnect』は、五月女遥とのデュエット。キリキリと痛みを感じる一方、前回中劇場での上演時よりもふたりの繋がりが強固になったようにも感じた。宝満と共にこの企画の常連の貝川鐵夫は、女性5人がショパンの甘さと儚さを踊る「ロマンス」、ヘンデルよりテノール独唱と共に踊られる男性ソロ『angel passes』の2作品を発表。木下嘉人の『ブリッツェン』は、音楽をよく捉えた動き。ダンサー3人のコンビネーション、照明による空間の見せ方も心得えている。福田絋也振付『福田絋也』はユーモアと意外性で最後まで惹きつけた。音楽はオリジナル。

   第3部では『生演奏によるImprpvisation即興』を上演、意欲的な試みだ。ダンサー6人と演奏家3人のコラボで、ダンサーたちは今その場で生成される音楽を即身体で捉えて、動きを創り出していく。誰かが作り出した動きをどう拾い、発展させるのか、あるいは自分で動きを創るのか…、仕掛ける/受けるの駆け引き、空間把握力、さらにはダンサーたちの感性や資質がより鮮明に見えてきて、実に興味深かった。

 本企画は振付家育成にとどまらず、ダンサーが新しい作品に出合う場であり、彼らの新たな顔に出合う場として、ラインナップに欠かせない公演となっている。今後の展開に注目したい。 

<2016年11月19日 新国立劇場 小劇場 / 文・守山実花>

 

『ブリッツェン』撮影:鹿摩隆司

『生演奏によるImprpvisation即興』撮影:鹿摩隆司

 



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