◆◆レビュー評◆◆文・乗越たかお 『幽体の集めかた』〈七尾旅人×ハラサオリ〉〈柴田聡子×小暮香帆〉

  ~ダンサー × ミュージシャン対決の濃密な舞台~ 

 ハラサオリは東京とベルリンを往還して様々な活動をしているが、振付家、ダンサー、パフォーマー、アーティスト…… ひとことで言い表すのが難しい。モデルとしても活躍中の恵まれた容姿だが、たとえ顔が汚れ歪められても、それを凌駕する身体そのものに見るべきものがある。今回はそんなハラのプロデュースで、二組のダンサーとミュージシャンのガチンコ対決企画があった。

 まずは柴田聡子×小暮香帆。柴田はギターの弾き語りなのだが、昨年度のエルスール財団新人賞現代詩部門の受賞者だ。シンガーが受賞するのは初で、それだけ詩に力がある。

 パッとしないテニス部の先輩を遠くから淡々と見ている(『ゆべし先輩』)とか、終電後に待ち伏せしている女性の色っぽい歌かと思ったら以後ずっと河童の話だとか(『思惑』)、我が道を行く感がハンパない。小暮が歌で踊るのは初めて見たが、淡さと濃厚さの混ざった柴田の魅力との相性はとてもよかった。ダンスは歌詞を追うわけではないし、いくらでも強く踊れるが、柔らかさを含んだ肉球のような強さを見せた。

 入れ替わりに登場した七尾旅人×ハラサオリは対照的だった。「最初の戦死者」となるであろう兵士に思いを馳せた(『兵士Aくんの歌』)から道ばたの花(『Memory Line』)まで、七尾の歌は強いメッセージや生命に関わる重さを内包している。ギター以外にも様々な音やエフェクトを使って語られる。ハラは全身でガッツリと七尾が放射するエネルギーに立ち向かうかと思うと、壁の奥にジッとうずくまり視線で観客を射貫く。歌とダンスの距離感の様々な変化が実に刺激的。
 構築する世界同士が拮抗する、アーティスト自身のセレクションならではの濃厚な2時間だった。

〈2017年4月7日 六本木スーパーデラックス/文・乗越たかお〉

 

 

C) 金子愛帆

 



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