マシュー・ボーンの『眠れる森の美女』プレビュー~古典を新たな視点から読み解いた話題作が待望の来日!


Photo by Johan Persson

文:高橋森彦(舞踊評論家)

・ユニークで鮮烈な劇場体験へと誘うボーン作品
ダンスやミュージカルの枠を超え幅広い観客から支持される振付家、演出家のマシュー・ボーン。1995年に初演された大ヒット作『白鳥の湖(Swan Lake)』では、白鳥たちを男性が踊り演じる異色の切り口で新鮮なドラマを展開し、4度にわたる来日公演でもリピーターが続出したのは記憶に新しい。近年では日英キャストによるコラボレーション『ドリアン・グレイ(Dorian Gray)』(2013年)によって健在を印象づけた。
ボーンといえばジョニー・デップ主演、ティム・バートン監督の映画「シザー・ハンズ」の舞台化などでも知られ、ミュージカルの振付も多く手掛けているが、本領は古典を現代の視点から読み解いた作品群にあろう。オペラやフラメンコでも取り上げられる「カルメン」を下敷きにした『ザ・カーマン(The Car Man)』、ロマンティック・バレエの名作を基にした『愛と幻想のシルフィード(Highland Fling)』などは、ユニークな発想、鮮烈なヴィジュアルと一体となった魅惑的なダンスによって至極の劇場体験へと誘う。


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・古典バレエの最高峰を読み替え大評判に!
そんなボーンの世界の魅力を存分に味わえるのが手勢ニュー・アドベンチャーズ(New Adventures)出演で贈る『眠れる森の美女(Sleeping Beauty)』。『くるみ割り人形(Nutcracker!)』、『白鳥の湖(Swan Lake)』に続いてチャイコフスキー作曲による三大バレエに想を得ており、2012年のロンドン初演は大評判を呼んだ。プティパの振付によって初演された古典バレエのストーリーは、悪の妖精カラボスの魔法によって100年の眠りについたオーロラ姫が王子の口づけによって目を覚ますというもの。それがボーンの手にかかると、清新でスリリングな、見るものの心を虜にするステージへと昇華する。


Photo by Johan Persson

始まりはプティパのバレエが初演された1890年。子どもの生まれない王と王妃が、闇の妖精カラボスにすがって、めでたくオーロラが誕生する。しかしカラボスに謝意を上手く伝えられず怒らせてしまい、オーロラは成人するとバラの棘に刺さって死ぬと呪いをかけられる。それから21年後(1911年)、オーロラは狩猟番の青年レオ(バレエ版における王子)と愛しあっていたが、誕生日のパーティーに闇の妖精カラボスの息子カラドック(カラボスと一人二役)が登場し、棘の付いたバラを姫に渡す…。ライラック伯爵(バレエ版における善の妖精であるリラの精)はオーロラをいばらの城に封じ込め、レオを不死の妖精にする。やがて時は100年後(2011年)、21世紀に!果たして物語の行方は――。


Photo by Johan Persson

・一度体感するとクセになる
ボーン作品はまさに「言葉のない演劇」。本作では登場人物の設定を変え階級差を強調することによってドラマに膨らみを増し、100年の時の移り変わりをダンスのスタイルの変遷やボーンの盟友であるデザイナーのレズ・ブラザーストーンの舞台美術・衣裳によって鮮やかに表す。ボーン作品の常として、さまざまなカルチャーや古典へのオマージュが随所に張りめぐらされているなどディティールの深みも魅力的で、見れば見るほど楽しめクセになるはず。配役は日替わりで、組み合わせ次第で異なるテイストを楽しむのも一興。今回はオーロラを英国のランバート・スクール・オブ・バレエ・アンド・コンテンポラリー出身の日本人である鎌田真梨が踊る回も予定されている(注:出演者はニュー・アドベンチャーズの意向により、各公演当日の発表)。
鬼才ボーンの近年を代表するヒット作に生で接することのできるチャンスを逃したくない。


Photo by Johan Persson

 

 

★☆★【 公 演 情 報 】★☆★

マシュー・ボーンの『眠れる森の美女』
日時:2016年9月14日(水)~25日(日)全16回公演
会場:東急シアターオーブ
〒150-8510 東京都渋谷区渋谷2-21-1 渋谷ヒカリエ11階

公演特設ページ⇒ http://mbsb.jp/

 

 

 


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