新国立劇場ではオペラ、バレエ、ダンス、演劇のジャンルで、大人とこどもが一緒に楽しめる公演が人気を博している。演劇部門では、2015年から続く長塚圭史の作・演出シリーズの最新作「イヌビト~犬人~」が8月5日(水)から国立劇場 中劇場で公開される。
本作は2012年の「音のいない世界で」、2015年と2017年の「かがみのかなたはたなかのなかに」に続く、近藤良平、首藤康之、長塚圭史、松たか子の豪華キャストで贈る最新作。長塚が作・演出を、近藤が振付を担う。
近藤良平が本作について語ってくれた。
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―― 振付や制作過程についてお教えてください
このシリーズは今回が3作品目なのですが、作品の中のここが振付だと最初から決まっているわけではないんです。稽古場で創作していく過程で、ここを舞踊的動きにしよう、ここは芝居だけにしよう、とだんだん形づけられていきます。
『イヌビト』の台本の段階では、どのシーンが振付、どのシーンが言葉中心なのかは決まっていなかったので、それが面白いところ。
ここはもっと動き優先で見えたらいいね、と稽古場で圭史くんと話しながら進めていっています。
そして、今回は中劇場に拡大ですので、いつもの4人に加え10人のダンサーたちに参加してもらうことにより、「空間をイヌビトで彩る」じゃないですけど、空間を動かすための振付、ダンス的要素が入ってきます。僕は20代から今まで振付を続けていますが、最近ではシンプル化していくということの重要性を感じています。
今回は特に「獣」というプリミティブな部分、できるだけシンプルではあるけど「祖先」のような部分に響くような振付が見つけられたらと思っています。
―― 出演もされますが、本公演の役柄は何でしょう?
保健所のサルキという人を演じます。イヌビトたちを処理するという役柄ですね。本当はそれだけではないんだけど、あまり言っちゃうとつまらないよね。おおまかに言うと、サルキだけではなく、このお話が抱えている、とても大事な役で登場しますよ。
―― 自粛期間中に考えさせられたことや身に起きた変化はありましたか?
まず、怠ければ人はいくらでも怠けられる、簡単にサボれるということを、すごく身に染みて感じました。ネット配信もいろいろしましたけど、単純に「身体を鍛えないと」とか、毎日のルーティン、朝起きてご飯を食べて行動を起こす、ということがどれだけ大事かということをすごく感じました。
僕はこれまでダンスを通して人々と触れあったり、コンタクトを取り合うことを大切にして活動をしているのですが、自粛期間中は自分も人々に接することができない中で、それでもオンライン上で人と出会えたりして。こういう形でも人とコンタクトをとる、人々と感じ合うという事ができるんだなというのは新しい発見でした。
―― エンターテイナーとして今後の活動への思いは?
これまではこれがやりたいとか、みんなに褒められたいといった思いが強かった時期もあったんですけど、今は役割としてやらないといけないこともあると感じています。
人々にエネルギーを渡すこと、人々を勇気づけるとか、もっと単純に言うと、舞台は心や人間関係を豊かにしてくれる。それを感じてもらうためにはやり続けないといけない、と心底純粋に思います。
ソーシャルディスタンスなどにはいろいろ悩まされますけど、今回も歌を披露したり、やれることはいっぱいある、そういう意味では、やり尽くそう!という気持ちで作品に向かって創作してゆく決意でいます。
特にダンスは、意外とひょんなところで誰もがすぐにダンスを踊る可能性があるんだな、と最近痛感しています。
人は浮かれたら踊るし、弔うときに踊る風習もある。その文化を継承してゆくためにも、みなさんにもダンスとつきあってもらいたいなと思っています。