◆◆レビュー評◆◆文・守山実花  キエフ・バレエ 『眠りの森の美女』

   ~カンパニーの個性を活かした〈タラス・シェフチェンコ記念ウクライナ国立バレエ- 2017〉~

 イリーナ・ぺレン、レオニード・サラファーノフを主演に迎えての『眠りの森の美女』。舞台美術は背景幕が中心のシンプルなもの。ヴィクトル・リトヴィノフの演出は、おとぎ話の色合いが強く出ており、カラボスや国王は、人形劇のお面のようなメイクを施し、戯画的なキャラクターとして登場する。洗練されているとは言い難いが、このカンパニーの個性でもある大らかさ、素朴さとはよくマッチしており、味わいがある。
 オーロラ姫のぺレンは、以前よりも踊りの輪郭線がはっきりとし、踊り自体も大きくなった。第3幕では、凛とした踊りから、淑やかさと厳かさが滲み出る。

 緩やかに時間が流れていた第一幕から100年がたったことを跳躍一つで明確に語ったのがデジレ王子のサラファーノフ。リトヴィノフ版独特の演出で、第1幕終盤、オーロラが倒れると時間が静止するのだが、止まっていたオーロラの時間は、王子が森に現れたときから再び動き出したことがよくわかる、切れのいいスピード感のあるダンスだった。ソロでは、手の届かない理想を求め日常と幻想の境界線を越えていく姿を、テクニックと内面表現が結びついた端正な踊りで描き出した。

 リラの精は、長身で整ったプロポーションのカテリーナ・カザチェンコ。抑制の効いた優美なダンスそれ自体が、王国を祝福する微笑みのよう。包み込むような温かさ、懐の深さがある申し分ないリラの精だ。フロリナ王女のオレシア・シャイターノワは、2013年入団の若いダンサー。小柄でふんわりとした雰囲気を持つ。技術的にもしっかりしており、見せ方もうまい。デニス・ニェダクの青い鳥は柔らかく、ノーブルな踊りで魅せた。

<2017年1月5日 東京文化会館大ホール / 文・守山実花>

 

 

 



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