Q. 盗作を踊りたいと思いますか? - A. 給料が発生しないなら別に踊っても良い。
でも給料の発生する国立劇場では、その行為が許せません。
まるで自分が盗作に加担したみたいに思ってしまいます、盗作に加担するほど私はバレエ好きじゃないです。
初演「くるみ割り人形」に向けて、振付家のシーモノフ氏が来ていました。
彼は今ロシアで割りと幅広く活動しています、モスクワでもラトヴィアでも、ロシアの地方でも、彼の作品が上演されています。
うちの劇場のバレエマスターはシーモノフだけれど、普段彼は世界を飛び回っている。
彼の振付の噂は、以前から聞いていたから、
どんなに良い振付をするのかと期待していたら、くるみ割り人形はロイヤルオペラハウスの盗作でした。
衣装デザインはベルリン劇場の、そのままでした。
しかし、ロシア人がロイヤルオペラハウスの素晴らしいダンサーのように踊れるわけないので
ロイヤルの振付から簡単に手直された、スポーツクラブの、エアロビ的な雪のワルツの振り写しが始まりました。
シーモノフがロイヤルから盗作したこの「くるみ割り人形」は、うちの劇場だけではなく、別の地方劇場でも上演されていて
その度に彼は文化省から、その街の偉大なる振付家、いわゆる~芸術の改革者~としてお金をもらっています。
金額は伏せますが、派手な結婚式が2回できます。
私はこの初演「くるみ割り人形」に出演することを辞めた。
練習していたものを途中放棄のほうが気持ち的に辛いかと思ったら、そうでもなかった。
コロンビーヌと、雪と、棒キャンディと薔薇ワルツは今までにもう500回くらい踊ってるし、
クラシックのくるみはワイノーネン版しか好きじゃないから別によかった。
しかし本当に今まで何度もくるみ割り人形の、各劇場の改定版を踊ってきたけれど、ワイノーネンに勝るもの無い。
あのヌレエフ版だって、私は苦手。
うちの劇場で初演は、ギャラが良い。ゲネプロでもギャラが出るし、衣装の早替えにもギャラが出るし、
劇場のオフィシャルに「初演」と書かれた公演はギャラが1,5倍になる。しかも8回公演だったから、踊れば稼げただろう。
だから、稼いでから辞めようと思ったが、気持ちがもう限界であった- 「盗作加担、盗作加担」。
太ったときに、パニックになるのと同じ。そのときは - 「余計な体重、余計な体重」しか頭にないw
シーモノフのネオクラシック作品は、舞台では映えたと思う。
私は彼の作品、「春の水」、「スーパーシンデレラ」、「真夏の夜の夢」に出演したが、割と面白かった。
しかしボリショイ劇場で上演されるほどでは絶対にない。
ネオクラシックを得意とする友達は 「これもあれも○○バレエ団からのパクリだよ」 と言っていた。
私はネオクラシックやコンテに関しては全くの無知と言って良いほど音痴なので、ここに関しては何も言えない。
ただ、前劇場でのバレエ 「せむしの仔馬」 を私に振付てくれたカリーニナ氏が得意とする腕のテクニックが
シーモノフの作品でもよく出てきて、似すぎている.....さて?.とは思っていた。
彼のクラシックは他に、「ドン・キホーテ」、「白鳥の湖」、「ライモンダ」その他あるらしいが
私はドンキだけ踊った。キューピッドの一部振付が、彼のくるみのフリッツと同じであった。
ジャーナリストの友達、研究者の友達から「ロシア人は信じられないほど丸々コピペする!」と聞いていた。
大学で卒論書いたときも、私は二年かけて一字一句丁寧に自分の文章で書いていたが、それを見たクラスメイトから
「なんでわざわざ自分で書くの」と冷やかされたことがあった。
ロシア人はネットからコピペするし、人から卒論を買うのである。
コピペ、バレエ作品もだ.!!!! なんてことだろう。
きっと、演劇や、私が知らない別の世界でもそうなんだろう。
私は大学で教師科を専攻したから、バレエマスター科のことは知らない、だから知らないことは何も言わないけど
一体何を学んでいるのだろう。お金持ちだったら、今からバレエマスター科に入学したかった。
1,5歳の娘を家に残してまで、盗作に加担して罪悪感に苛まれながらバレエ踊って給料もらって(しかも薄給)
気持ちがぐじゃぐじゃ。ここまでするなら家で娘といて、それより良いのは日本でバレエ指導、と確信した。
わたしはまだ「母親」に心底なれていない、なれる気もしないけど。娘がたまに妹に見える。
まあでも、子供は自分の分身だと思ってしまう女性よりはいいのかもしれないね。
娘にはバレエやらせない。しかしどうしよう甲がある。
飲むしかない。