<2019年度Balletクレアシオン>平山素子インタビュー・新作『サルコファガス』

 若手振付家の発掘と育成を目的とした日本バレエ協会<2019年度Balletクレアシオン>が今年も開催される。本公演の振付家は、宝満直也、遠藤康之、平山素子の3人。今年8月に大和シティバレエで開催され好評を博した宝満の振付作品「Four to Four」と、遠藤によるキリスト教以来の「寛容」をテーマにした新作「月下」、そして平山の初演作品「Sarcophagus/サルコファガス」が発表される。


 「サルコファガス」は、ギリシャ語の「肉体を食べるもの」という語源があり、また、彫刻や装飾を施したエジプト石棺の意もあるという。作品について、振付家の平山素子がインタビューに応じてくれた。

 

  - サルコファガスには、「肉体を食べるもの」と、彫刻や装飾を施されているエジプト石棺の意があるそうですが新作のタイトルに込めた思いは?

 ギリシャ語の sarx(肉体)+ phagein(食べる)で、「肉体を食べるもの」という意味ですが、この言葉に出会ったときいろいろな情景の断片が脳内に流れ込んできました。

 今回のダンサー20名は20代半ばの若い世代が中心ですが、リハーサルで「あなたたちのサルコファガスがあるとしたら、どのような装飾や彫刻が施されると思う?」といった問いから始めました。

 私の振付は、ダンサーと共に「動き」を創り上げていくのですが、それを超えてダンサーの身体を浸食していく、言い換えれば、食い尽くしていくような恐ろしくて美しい「緊張感」や「充実感」を共有できないかと考えました。

 造形的に動きを積み上げながらも、性質やエネルギーを観客の脳裏に焼き付け、刻み込んでいくことを改めてチャレンジしてみたくなりました。また、「壁」という言葉から、「境界線」というイメージを膨らませています。

 また、美術家の渡辺晃一さんからのご提案で、蝶を演出で使用することになりました。これは「精霊」、「しらせ」、「変化」などを象徴しています。

 具体的なストリーを軸としていない、約30分の作品になりますが、折り重なる断片から「人生は未知なる体験の連続で、それがそれぞれのオリジナルの物語(生き様)を創り上げている」というメッセージを込めています。

 

 - 本公演の音楽についても教えてください。

 落合敏行さんにオリジナル音のデザインを依頼しています。落合さんは私がH・アール・カオスで踊っていたときからの知人で、最も信頼しているアーティストの一人です。  

 「un/sleepless」、「月食のあと」、「Twin Rain」などの音も手掛けてくださり、私の作品の独創性を際立たせてくれる存在で、不思議な時空、退廃的な美、不可視なものをサウンド化することに卓越した芸術家です。

 リハーサルでは音を極力使用しないで進めていまので、ダンサーにはやりづらい状況かもしれませんが、己の動きにより、体験できる感触や小さな音や波に集中して自らの時間的感覚を見直していくことに重点を置いてもらっています。

 その創作過程から、落合さんがどのようなサウンドをイメージしていくのか、そして、その音にダンサーの身体がどのように反応し、連動して変化をしていくのか。この作品において、その過程はとても重要なプロセスになります。最後の仕上げに至るまで、作品の誕生を楽しみたいですね。どうぞご期待ください。

 

 



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