カルメン全公演が終わりました。
僕がドンホセを躍らせていただいたのは、一度だけだったのですが、幸せでした。舞台のあとには、いつと反省ばかりしている僕にとって、舞台で幸せを感じられるのは、珍しい経験です。
いつもの公演では、熊川監督から事細かに指導があり、それに基づいて自分の解釈や自分らしさを重ねていきます。
しかし今回の公演は、熊川監督もほとんどの解釈をダンサーに任せてくださり、おかげでスタジオでも自宅でも、道を歩いている間も電車に乗っている時も、多くの時間を役柄について考えることに費やしました。
1幕では、真面目に生きる青年をベースに、普段のドンホセを。ここで、いかに誠実なまともな人間かを見せることで、その後への変化をつけやすくしようと思いました。
ミカエラに対して抱いている愛情は男女のではなく、幼馴染として、また自分を慕ってくれている人への気持ち。それを明確にしておかないと、ミカエラという存在がありながらカルメンに惹かれていくのが、ホセの性格との違和感が生まれてしまうと思ったので。なので、母親から届いたミカエラとの結婚を催促する手紙に戸惑います。
酒場のシーンでは、カルメンが見当たらず、そんな自分を嘲笑するように、ドアから帰ろうとする。
2幕の山でのシーンは、カルメンへの愛をいかに表現するかで、最後の闘牛場への繋がりを持たせるかを考えました。例えば、ミカエラが訪ねて来た時に2回抱きしめる振り付けが入っていますが、そこではただ抱きしめるのではなく、頭を引き寄せて子供を慰めるように抱きしめることで、ミカエラとカルメンへの気持ちの違いを表したいな、と。
最後の闘牛場のシーンでは、そこまで演じてきたホセ像の延長線上に描きました。
カルメンのために、全てを捧げたホセにはカルメン以外には何も残されていなくて、だからここはカルメンにすがるような、唯一残されたカルメンだけは失いたくない、と足掻くホセを演じようと思いました。
すっかり落ちぶれたホセは、初めはカルメンと目を合わせている勇気すらない。カルメンに触れようとするけれど、恐る恐るカルメンに手を伸ばす。拒絶されてもカルメンへの執着を捨てきれず、最後にはカルメンを殺すしかなくなってしまいます。
元々カルメンに依存して生きてきた訳ではないので、そこにストーカー的な性質と、ホセの悲劇との差があるのかな、と個人的には思います。
試行錯誤して自分の思うドンホセが完成した気がしました。
他の作品と違って、カルメンはシーン毎に心境が変わっていきます。なので、役柄も人間味の多い、説得力の強い演技が必要になってきます。
踊り甲斐、演じ甲斐のある作品でした。
役を演じるというのは、その人の人生を想像することなのだと、学びました。
もう一度、やりたい!終わってからも、ふとした時に闘牛場のシーンを頭の中で想像してしまいます。
わざわざいらっしゃってくださった皆様、ありがとうございました!