『HANAGO -花子-』伝統と創造シリーズvol.10 森山開次の最新インタビューをお届け!

 能の名作をもとに描く、『HANAGO -花子-』伝統と創造シリーズvol.10。
花子を酒井はな、花子にまつわる存在を能楽師・津村禮次郎、そして振付・演出・出演を森山開次が担う。
 公演を約1ヵ月前に控え、リハーサル真っ最中の森山がインタビューに応じてくれた。

 

―「班女(はんじょ)」の遊女・花子と少将の切ない恋物語と、一人息子を亡くした母親の悲劇「隅田川」の2作をモチーフとされるとのことですが、「HANAGO」はどのようなストーリー展開になるのでしょうか?

 この2作品に登場する、班女の花子と隅田川の母は同一人物とみなすことができます。
 若き花子と、我が子を探し放浪する母。この2つの曲目はとても対照的です。班女は、待つ女として愛に狂うが、最終的には、吉田少将と再会を果たしその思いは成就します。
 しかし隅田川は、我が子には会うことができず哀しみにくれる。ひとりの女性の2つの愛の行方を追うストーリーを展開させます。

― 森山開次さんにとっての「狂気(狂い)」とは?

 能の中での「狂い」とは、意図的に狂うものであると聞きました。
狂うとは、ただ単に本当に我を忘れて狂ううことではない。
狂ってみせる。それは、舞ってみせること、演じてみせることとつながる言葉。
それは、踊り手の私にとって大きなテーマであります。

 踊りを踊っているとトランス的な状態に入ることもあります。
ですが、特に舞台表現の場においては、完全にトランスすることが必ずしも良いとは限らない。もちろん、それは貴重な体験であり、価値はとても高いとも感じています。ですが、安住した形だけの狂いは踊りたくないし見たくもない。

 アニミズム的な憑依とは違う、思いが強くあって初めて狂う表現。ギリギリの精神的な状態で、生きようとする姿の中に出合う狂気の思いは、そこにひとつの美があるとも感じる。
 ただそこには、透明な愛がなければならない。ギリギリの一線の上で、「狂ってみせる」ことを目指したいと思っています。自暴自棄になる単なる暴れとは違う強い信念がなければ、いけないのでしょうね。

― 初共演となる酒井はなさんば、ダンサーとしてどのような印象をお持ちですか?

 言わずと知れた、素晴らしいバレダンサーであり、表現者。
踊りの技術の追求のみならず、役柄を理解し、演じることにとても優れた稀有なダンサーです。そこには、きっとその役柄を深く理解する努力をなされていることと思いますが、舞台上で拝見するととても自然に舞台に存在している。
 花子のこの2つの愛を表現することはとても難しいアプローチになると思いますが、きっと酒井はなさんであれば、可能だとこの演目を選びました。

― 本作への意気込みをお願いします

 まっすぐに酒井はなさんを見つめ、花子を演出したい。
とてつもなく悲しい逸話ではあるが、酒井はなさんが演じる花子の一生をを通して、観客の皆様の心を掴む作品にしたいと思います。



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